[コメント] ジャッカルの日(1973/米)
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主要人物の造形が秀逸。ジャッカル(エドワード・フォックス)の常に英国紳士然とした風貌や背筋の伸びた軽やかな歩き方ひとつとってみても、ストイックに仕事に打ち込むプロの姿勢が感じられ「こいつはやりそうだ」と映画的な説得力に溢れるのだ。シンブルな武器を好み、それを自分仕様に調整する西瓜のシーンも見ているだけで楽しいし、自分にとって邪魔な人間を無慈悲に暗殺するその(見せすぎない)手際の美しさも「らしくて」よい。
そんな殺しのプロに対抗するルベル警視(マイケル・ロンズデール)の描き方もまた素晴らしい。彼は自宅では生き物を愛し、疲れて寝入っては妻に足をつねって起こされるという、おそらくは嫁の尻に敷かれているような男である。が、職場では「彼しかいない」と全幅の信頼を勝ち得ている男でもある。途中一旦お役御免となるところで何の言い分も発さず、軽く会釈をして去っていく潔さもいい。このあたりの描写で、彼がこれもまた職人気質のプロ中のブロたる警官であることを示すところも巧い。
巧いというと、ここぞの場面であえて音楽を流さず、自然音のみで通すところもより緊迫感が増してよかったし、電車で逃げたジャッカルが駅に到着する時刻が時計で示されるところなどは、どうしても監督自身の『真昼の決闘』を想起し、これもまた楽しかった。
最後警視がジャッカルの遺体を葬ってやるところなども、ある意味命を懸けて戦った敵への敬意が感じられて妙に清々しい後味が残る。そういう意味ではこの作品もまた映画のプロによる仕事なのだと感じた。
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