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[コメント] 不思議惑星キン・ザ・ザ(1986/露)

逆説的な不思議連邦
山ちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







かつて、20世紀には、ソ連という国があった。 ソ連とは不思議な国である。なぜかというと何もかもが逆説的だからである。

科学技術が発達していくにつれて強いられる国民生活の非文明化。 独裁者により統制された平等社会。 ノルマ制によって何も達成されない生産性。

キン・ザ・ザの世界は、究極のソ連のようである。もっと言うと、逆説ワールドだ。5秒で他の惑星に行ける宇宙船など高度に科学技術が発達しているにもかかわらず彼らの生活は原始レベル。地球人の言語中枢を解析できるほど優れた言語能力?があるにもかかわらず、自己の言語は、「キュー」と「クー」だけ。

とはいうものの、悲観的に思える世界で彼らは楽観的であり、究極のソ連は、シリアスに見えてコミカルである。もっと言うとディストピアのようでユートピアのようにも思える。 そして極めつけは、最後のシーン。コミュニケーション喪失の象徴であって、無力と化した言葉の象徴とも思える「クー」が、最後の最後に、地球に戻った二人の、運命共同体の絆の象徴として現れる。そしてそれは不思議な感動を起こさせる。これはもう魔法のようである。これは、一体何なのだろう?

ソ連は、互いが騙し合う不信社会だからこそ信頼関係が構築されると他のどこの国よりも固い絆で結ばれると言う。そんな逆説的な不思議連邦だからこそこの不思議な感動は、生み出されたのだろう。

(評価:★4)

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