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[コメント] 三文役者(2000/日)

脇役専門、演技は下手な部類、出番は30秒のときもある。にも関わらずみんな殿山泰司のことを知っているのは何故だろう。その答えがこの作品にある。泰ちゃんをいつまでも忘れないための、映画人と映画ファンのための映画。
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確かに竹中直人の演技は小賢しい。しかし、似ている。その小賢しさのおかげで私は終始、泰司本人を彼の姿に重ね合わせて見ることができた。彼の演技そのものや現代風景の中におかれた昭和30年代という強引な設定にいろいろ意見もあるだろうが、「泰司を演じさせる現在もっとも的確な人選」ということと下手に作らない風景に私は好感を持てた。

映画出演本数200本以上。ほとんどが脇役&チョイ役だ。演技は巧い部類ではない。でも彼が一瞬でも出れば画が引き締まる、いわゆる「味のある役者」なのだ。彼を支えてきたのは映画で語られる豪放磊落な本妻と側近、頭が上がらないカントク、そして多くの映画仲間。幸せな人生だったと思う。こんな人たちと酒とジャズに大きく大きく包まれて、泰ちゃんは一生を全うしたのだ。

自ら好んで脇役をしていたという。しかし、脇役の重さも軽さも知っていた。映画の中で語られる「脇役がいなければ主役は〜」という台詞も、脇役であることの自負と自信が溢れている名ぜりふである。そういった心意気がちゃんと観客に届いている。だから映画人と観客に愛された役者でいられたのだ。

死後、本妻と側近とに遺骨が分けられ、墓も二つある泰ちゃん。いいエピソードである。

(評価:★5)

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