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[コメント] ホワット・ライズ・ビニース(2000/米)

いくつか不満はあるけど、この手の作品の場合、理屈はどうあれ、“怖かったかどうか”と言う点が何より大切であり、そしてその肝心な怖さの演出は見事だったのだから、充分面白い作品として挙げて良いんじゃないかな?。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 監督にロバート=ゼメキス、主演にハリソン=フォードミシェル=ファイファーという強力トリオで、非常に期待は高かったのだが、公開当時の映画評はことごとく不評。結局劇場では観る気を失い、テレビ放映となってようやく観た作品。

 確かにいくつかの点では問題があったのも確かだが、言われるほど酷い出来ではないと思う。むしろ後半部分はテレビ画面をひたすら凝視していたし。

 多分この作品が評価されない部分は以下の理由によるもののようだ(当時観ようか観まいか結構迷ったからネットで検索をかけて調べたもので)。

 1.役者の無駄遣い。

 2.ホラーだかサスペンスだか分からない作り。

 3.ヒッチコックの匂いがしすぎてパクリものに見える。

 実際観てみると、確かに全部当たっている。役者に関しては、フォードであれ、ファイファーであれ、嫌いではない。と言う程度でさほど思い入れがない分、素直に観られた。まあ、強いて言えば、フォードは地味目な役割を淡々とこなしていたが、彼である必要性がほとんど感じられなかったくらいか。ファイファーは上手いと思うが、最初の内に幽霊の存在を徹底して否定してくれれば物語としては完成度は高まったかな?(前半部で誰かの悪戯と思わせ、それを裏付ける証拠を突きつけたら視聴者の意識を混乱させれたはず)

 “恐怖”の演出については、ちょっと中途半端な印象を与える。これはオチがホラー調だったのに、基本的にサスペンス調で物語が経過するから。と言う事だろう。サスペンスとして観ていたら、後半からホラーっぽい作りになってしまったため、何となく落ち着かない気分にさせる。しかし、実際に“恐怖”の演出と言う目で見れば充分にその役割を果たしたんじゃないかな?ホラーとサスペンスの恐怖の演出の違いは襲い来る対象が理性を持っているか、持っていないかと言う点が大きいと思うが、主人公クレアにとって、その対象が夫であるノーマンと幽霊の双方向から来るものだから、それが落ち着かなくさせてしまったのかも知れない。

 そしてサスペンスの巨匠ヒッチコック的演出。これは確かにその通り。ゼメキス監督はそのタイミングや方法など、技術的な意味だったら本当に良く勉強していることが分かる。ただ、あくまでそれは技術に過ぎず、本来ゼメキス監督が持っている自分らしさの演出が今ひとつしっくり来なかった印象はある。

 ヒッチコック作品におけるサスペンス仕立てと言うのは、徐々に真相が明らかになり、どんどんおかしな部分が剥ぎ取られていくのが大きな特徴なのだが、この作品は全く逆に真相が明らかになるほどにおかしな部分が増えていき、最終的に幽霊の仕業に全部押しつけてしまったわけだから、そこら辺がちょっと合わない人は合わないだろうと思う。

(評価:★3)

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