[コメント] 戦場にかける橋(1957/英=米)
「戦争はなにも生まない」か?いや、その答えが「NO」だった時代がある。意地の張り合いが、戦争の生み出す役立つものさえもぶち壊し、そのわずかな価値さえも摘み取ってゆくのだが。
この場合の意地の張り合いは西洋対東洋ではないどころか、英国対日本ですらない。ここにいる日本人は威張りくさるだけの無能な輩だ。橋ひとつ創るだけでも作業に従事する英国人の足を引っ張るだけだし、事実英国人が立派な橋を築いてもそれを賞賛する度量の広さすら持ち合わせていないのだ。
英国対英国(+米国)の図式がここには描かれている。ここには戦闘においても、創造においても優れた母国を描くに何のためらいもない時代背景がある。だが、一見無為な建設にすら価値を見いだせるだけ、アレック・ギネスは誇りを見失っていないのだ。敵の虜囚となっても誇りをもって兵士の生業を全うする。これは虜囚となるのを潔しとせずに自決したり、あるいは虜囚となっても敵には従わずひたすら脱走のチャンスを待つのとどう異なるだろうか…何やら戦国三武将の「ホトトギス」の句めいてしまったが、戦争のなかで正気でいることは決して困難なことでないことをこの映画は教えてくれる。何かを建設し、何かを創造すれば自国勝利の暁には、それは母国の財産にすることも不可能ではないのだから。「戦争の無意味」という言葉はわりあいに新しいものであるような気が自分にはしてならない。最大の愚挙は無差別爆撃だ。今、イラク戦争においても何やら理屈をつけて無差別爆撃は行なわれている。これを見たらギネスはどう思っただろうか…?
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