[コメント] 日本の黒い夏―冤罪―(2000/日)
人の心とは恐ろしいもんです。
僕は事件発生当時から“あの人”が本当に犯人なんだろうかと思っていた。まるで何かにとりつかれた様にマスコミも世論も「あの人=黒」へと向かっているという事が気持ち悪くてそんな疑問をもった。
……なんて事を言うと自慢みたいだけど、実は全く逆。『12 Angry Men』のフォンダよろしく一人疑問を持つって事に憧れてた程度。試しに友人何人かに「あの人は白かもしれんぜ」と布石を置き、もし黒なら「あ、やっぱ黒だったんだ。ふーん」と流すだけだし、もし白だったら「ホラ、オレの言った通りだったろ!」と自慢するつもりだった。ある意味、一番ひどい心持ちだったのかもしれない。毎日、テレビ報道に釘付けになり事の成り行きを見つめた。世間が黒の方向へ進めば進むほど、僕のひどい心も成長していった。
こんな人、結構いるんじゃないだろうか。実際、自慢した人いるんだろうか。僕は白と分かった時、自慢する所か自己嫌悪の嵐だった。おかしなもんだ。その時になるまで僕は僕のひどい心に気付かなかった。どうかしてた。人間の心とは恐ろしい。何気ないから恐ろしい。誰も彼もが、まるっきり善人でも悪人でもないから恐ろしい。
「結構いる」から僕も仕方ないじゃんとは思えなかった。そういうぼやかしが、あの冤罪につながっていったのだと思うから。
あれから、うちにはテレビがない。
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