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[コメント] あの頃ペニー・レインと(2000/米)

ペニーは必死に自分の居場所を探してる。でもそれが無い事に気付くのが怖くて、実体の無い透明なファム・ファタールを気取ってる。それが判るから彼女が輝けば輝くほど切なくなる。
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 小悪魔的なヒロインは映画に山ほど登場してきたけど、ほとんどはオヤジ目線の「こういう娘いたらエエなぁ〜」てな感じで中身のない、ただエロいだけの男にとって都合の良い描かれ方だったりする。まるで生まれた時からそういう娘なんだとでも言いたげだ。でもこの映画のヒロインは本当は孤独で、人と正面から向き合うのが怖い臆病な少女なんだと少年=監督はちゃんと見破ってあげている。なんとかしてあげたいと思っている。

 少年を称してバンドの取り巻き少女たちが言う。「彼は女性をちゃんと敬える素晴らしい男の子よ(うろ覚え)」 歳のわりには純朴すぎるそのキャラは、優しいお姉さんと道徳を重んじるお母さんという女ばかりの環境で育ったからだろうか。真っ直ぐで賢くて純粋で愛され上手な性格だ。

 そこでキャメロン・クロウだよ。コイツは本当にくわせ者。『セイ・エニシング』(十代の青春)、『シングルズ』(二十代の若者群像)、『ザ・エージェント』(三十代の生き様)と観てきた。どれも純粋さを失わない(「シングルズ」の場合は少し違うが憎めないキャラ)主人公たちがキラキラ輝いていた。そして自身の少年時代を描いたというこの映画を観た時、コイツは…この監督は呆れたヤツだな! と笑った。今までの作品も、全部自分が主人公だったんじゃないか! (※トム・クルーズ持ち込み企画のリメイク『バニラ・スカイ』は別として)

 もしそうなら、クロウは自分で脚本を書いて撮ってきた映画でなんべんも「彼は優しい人だ」「彼はイイ奴だ」「彼は純粋な人だ」と登場人物たちに自分を褒めさせていたワケだが…普通ならイヤミを通り越して滑稽だし、実際そう受け取る人がいてもおかしくないのだが、自分はむしろ「コイツやっぱイイ奴だよ〜」とニヤニヤしてしまった。

 なぜなら彼の映画はどれも、そんな主人公を支える周りの人たちへの感謝の念と愛情に溢れている。自分が真っ直ぐなイイ奴として生きてこられたのは、そんな人たちのおかげだと判ってる。彼は自分の家族も自分が出会った友人たちも大人たちもかつての恋人も本当に大好きで、まずそれを伝えたくて、その気持ちを映画に込めてきたんじゃなかろうか。僕はこの大好きな人たちのおかげで素晴らしい青春を送れたし、いつまでも真っ直ぐでいられるんだ! と臆面もなく披露しちゃえる無防備さが、コイツ絶対イイ奴だと思わせるんだなぁ。

 この愛され上手!

(評価:★4)

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