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[コメント] あの頃ペニー・レインと(2000/米)

魅力的な人物たちの魅力的な表情だけで映画はこんなにも輝くのか。気持ちの動きに、表情が、音楽が、ここまでぴったり重なってる映画ってそうない。
ろびんますく

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「One day, you'll be cool.」

この映画は、そこから始まるロード・ムービー。それは、少年の成長物語であると同時に、あるいはそれ以上に、彼とかかわる人たちの、そして一つのバンドの成長物語でもある。

姉の言うクールな人間を目指して旅に出るウィリアム少年。彼に対し「Just make us look cool.」と言っていたラッセルやジェフ。だが、皆、最後にはクールに見えることよりも、もっと大切なものがあることに気付く。ただし、ここでは、気付くだけ。それを手に入れられるかどうかはこれからだよ、と。そんな余韻を残しつつ終わるところが何とも心地良い。

キャメロン・クロウという人は、物語そのものに何かドラマチックな決着をつけるよりも、それぞれの人物の気持ち、そして気持ちと気持ちの関係に決着をつける。母と姉。男と女と少年。ボーカルとギター。それがまた、このロード・ムービーにとてもよく合っていて良い。

気持ちの描写が秀逸だから、好きなシーンや台詞を挙げ出したらきりがない。出て行った姉のレコードに初めて触れるときのウィリアム少年の表情にはドキドキして胸が高鳴る。誰もいない会場の中で一人踊るペニー・レインには眩しくて目が眩みそうになる。「What kind of beer?」強さと弱さがこれ以上ない絶妙なバランスで同居している彼女の泣き笑いには切なくて胸がチクリと痛む。ラスト近くの母と娘の「I forgive you.」「I didn't apologise.」には嬉しくてにやにやする。

そして、やっぱり個人的に一番好きなシーンはラッセルがペニーへの電話の後にウィリアムの家を訪ねてくるところ。棚に飾ってあるウィリアムの写真で気付いて「Oh, man...」と呟いた後、少しずつ微笑むラッセルの表情には、すがすがしささえ感じられ、何とも好きだ。

でも、この映画の何が好きなのか問われたなら、ぼくもやっぱりまずは言うだろう。

「To begin with.......everything.」

     −−−

 Thinking how it used to be,

 Does she still remember times like these?

 To think of us again?

 And I do.

 Tangerine, Tangerine,

 Living reflection from a dream;

 I was her love, she was my queen,

 And now a thousand years between.

---‘Tangerine’ Led Zeppelin

(評価:★5)

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