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[コメント] メメント(2000/米)

うーん、これは何とも悲劇的な病気だ。「記憶」が人間の精神にもたらす効果について考えさせられた。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ポラロイドには「彼の嘘を信じるな」と書きこみ、自らの体には車のナンバーを刻む。全てはレナードの自作自演であったことが映画の最後(時間軸では最初の方)に暴露される。彼は何故そのような行動をとり、また今後もとり続けるの(であろう)か?「愉快犯」とか「確信犯」といった言葉は、彼にはあてはまらないと思う。なぜなら彼は病気、世にも悲劇的な病気なのである。

「前向性健忘」について詳細な知識は持ち合わせていないが、おそらく彼の精神状態は次のようなものなのではないだろうか。病気が発症した時点の精神状態(そのきっかけが妻を犯され殺された事実ではないことは示唆されているが、少なくとも彼自身はそう思い込んでいる)が常に彼を支配しており、その後いくら新たな経験を積み重ねていってもその新しい記憶が根付くことは無い。まるで、凝り固まった「根雪」の上に降る「新雪」がすぐさま溶けてしまうかのように。おそらく人生で最悪の精神状態がバックアップされ、そのとき抱いた怨念がその後の全ての行動を統率するが故、永久に次の「ジョン・G」を求めてさまよい続ける。彼にはそうするしか生きる術がないのだ。

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特に躁鬱病とかいうわけではなくても、人の精神状態には起伏があるものです。少し長めのスパンで見ても、人生において精神的に悪い状態、スランプにおちいる時期というのは誰にでも訪れます。だけど、悪い精神状態も時間が経てば癒されるのが普通。「時が解決してくれる」。けれども、彼がその恩恵に預かることはけっしてないのです。

「記憶」には「物事を憶えておく」という基本機能だけでなく、新しい記憶を重ねることで精神状態を中和させ、安定したものにするという効用もあるのだと認識しました。

(評価:★4)

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