[コメント] 拝啓天皇陛下様(1963/日)
長らく観たかった作品だが、予想に反して牧歌的なのに驚いた。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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山ショウは入隊後、苛められ乍らもなんとか先輩や同期と共に一兵卒として日々を過ごしてゆく。軍隊を懐古的に描いているのは、非常識な運動部を卒業生たちが懐かしむのと同じで、多くの軍隊経験者にとっては受け入れ易いのではないだろうか。しかしその「過ぎてしまえば懐かしい」軍隊生活も、その中で被害者となった者には同じ風景ではない。『真空地帯』('52)や『陸軍残虐物語』('63)の西村 晃が意地悪な上級兵(原一等兵)を演じている所にミソがある。本作での彼の印象は微妙に異なっているが、それは西村が別人格なのではなく、苛められる山ショウが別人格だからなのである。
従軍作家として戦争中にいい思いをした棟本(長門裕之)は、周りと同様敗戦後に一時落ちぶれはするが、何だカンだ言って結局筆を折る事なく文壇に復活する。山ショウ(渥美 清)の純朴な性格とその末路は、この牧歌的で人情味のある物語に共感した観客を、実はさりげなく皮肉っているのではなかろうか。しかしそうとも言い切れない微妙な味わいもあり、それが制作者自身の自戒の現れにも思えるのだ。
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