[コメント] リリイ・シュシュのすべて(2001/日)
俺も鑑賞中おもいっきり「『少年時代』じゃん」って思ってたんだけど、ひねりがないのでもいっこ考えた。『がんばっていきまっしょい』の裏バージョン。
あの頃っての描写ってのはそんなに繊細にそんなに強烈に伝えられずとも、その人の中にある記憶を叩く事が出来れば、それだけで十分な印象を残せるものだ。何が良いってもんじゃなくとも、記憶の中を呼び起こすものに人は常に一定の価値を与える。『がんばっていきまっしょい』が青春時代特有の輝きを思い起こさせるツールならば、この映画はその痛みを思い起こされるツール。そこまで意味のある、そこまでリアルな描写である必要はない。「思い出させてくれる」だけで良いのだ。それぞれの大人たちの中に共通してある一定の痛みを描ければ、後はそいつらが勝手に自分の中に傑作を作ってくれる。
また逆に主人公の世代にとっては、自分の感情に近いものが描かれる驚きがある。彼らは独特の痛みを共有しながらも、それを明確な言葉にすることは出来ないし、まして友達同士でおおっぴらにそれを話し合い、問題を整理し認識することなど出来ようはずもない。そんな彼らにとっても意味のある作品なのかもしれない。ちょうそ宇多田ヒカルの歌詞を読んだ女子高生が「なんでこんなに私が思ってることが全部解るの?」と素直に驚くように。
そういう作品です。「思い出しツール」。それをリアルと呼べなくはない。俺のように、主人公の世代が抱えてた感情を自分で客観視して整理できるくらいの経験があり、尚且つどこぞの監督に突っついてもらわなくても未だその感情を抱えながら生きてるくらい若くもある、そんな世代からすれば、この映画は滑稽だ。言われなくても解りきってる事を大げさに暴いてみせても、残念ながら俺がそこに価値を見出す事はない。
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