[コメント] 友へ チング(2001/韓国)
韓国で何と800万人という脅威の観客動員数を得た映画。結構任侠映画が好きな私としては、絶対観るべき作品だと思っていた。
私がこの映画で期待したのは、実は古い邦画の任侠映画だった。確かに内容的には似ている部分もある。だが、やはり国柄の違いか、結構違っていることにも気付いた。
内容的には「友へ」という副題が付いていることからも分かる通り、ヤクザ間の上下関係よりむしろ横のつながりの方が重視されている作りで、そこでの人間ドラマが展開している。物語としては構成がしっかりしているし、友情を主題に持ったことから、なかなか骨太なドラマだと思った。韓国映画だと、どうも顔の区別が付きにくいのがネックだが、これは主人公格の四人がそれぞれ特徴的な顔をしているので、よく分かるのも良し(笑)
やや設定や物語のつなぎに難もあり、この映画がこれ程のヒットをするのはちょっと理解できない部分もあるが、それもお国柄と言うことなのだろう。
ただ、この映画を観てしみじみと思うのは、むしろ現代の邦画についてだった。この作品は、画面全体を通し、「俺は映画だぞ」と全身で表現している。実際映画でしか表現できないような洗練したカメラ・ワークを駆使し、凝ったアングルを意識しているのがよく分かる。だから派手なシーンであれ、落ち着いたシーンであれ、“映画的な”自然さに満ちていた。
一方、最近の邦画の撮り方はまさしく“テレビ的”である。内容的に良作はかなり作られているにも関わらず、カメラ・ワークがモロにテレビでの撮り方になってしまっていて、“映画的なもの”を観たい私としては、ちょっと物足りない(カメラ・ワークについて勉強が出来ないし、何より「俺は分かってるんだぞ」という優越感に浸れない(笑))。最近の邦画で目に焼き付くシーンが少ないのはそう言う事なんじゃないだろうか?
そう言う意味で、これだけ全身で“映画”を主張しているだけに、この作品は私にとっては微笑ましく、かなり満足のいくものだった。
ただ、それで満足して映画館を出る時不意に思ったのだが、逆に邦画は“映画的なもの”という不文律を破ることによって、自由さを取り入れているのかも知れない。と言うことだった。凝ったアングルを捨てた代わり、より自然さを取り入れることが出来ているのかも知れない。
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