[コメント] トンネル(2001/独)
映画を見終った人むけのレビューです。
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音楽がうるさい。カメラがうざったい。センスのかけらも感じられない。
「神は細部に宿る」というのが私の持論だ。どんなに荒唐無稽な話でも細部がしっかりしていれば「映画」足りうる。この作品は全く逆だ。ストーリーは「実話」を謳っているだけあってそれなりにしっかりしているのだが、細部はメチャメチャ。
何でそんな重大な計画をあっさり大家のオバハンに話しちゃってんだ?何で秘密の計画を客がいっぱいいるカフェで大々的に図面広げて話してんだ?だいたい最初に言ってた「掘った土」はどこに運んだんだ?トンネルってのは掘るだけで自動的に支柱が生えてくるもんなのか?支柱の木材はどこからどうやって入手したんだ?金はどうしたのかと思ったら「2日も食べてない」なんて台詞一つで処理すんなよ。どうやって仲間を公募したんだ?いくら東ドイツが間抜けだって耳にはいるだろ。それにいきなり現場に呼んで面接してる意味がわかんねぇよ。スパイが混じってたらどうすんだよ。『七人の侍』観て人集めのやりかた勉強しろよ。本当はいきなりデブデブで毛深い水泳選手ってだけで「だめだこりゃ」と思ったんだけどね(なぜか水泳選手って毛がないんだよね。やっぱり水の抵抗で無くなっちゃうのかね。どうでもいい事だけど※)。
「だって実話なんだもん」っていう制作者の言い訳、開き直り、甘えが露骨に出た作品。敵役の描写一つとっても「東ドイツって言えばみんな分かるでしょ」的な甘えがある。悪役に凄味が無い。あるいは、あの大佐にだって「失敗したら明日は我が身」といった恐怖に怯える描写があったっていい。なんにせよ「恐かったよ〜ん」と口で言っているだけで拷問の恐ろしさが全く、全く、全く無い。俺は『マラソンマン』が観たくなったぞ!じゃあさ、動的な恐さじゃなくたっていいよ。尾行一つとっても『見知らぬ乗客』みたいな静かな恐怖はないのかね。
っていうかさあ、もう少しスパイ合戦とか知力戦とかなかったの?最後は結局体力勝負かいっ。別にね、『灰とダイヤモンド』みたいな濃い政治的メッセージを求めちゃいないよ。だけどさ、少しはあったっていいんじゃないの?「なぜ同胞が憎しみ合わねばならんのだ」当人達じゃなくて俺が思っちゃったよ。
『シュリ』の時も同じ事を書いたが、これほど映画的に恵まれた状況設定を持ちながら凡百のハリウッドメジャー並の作品に終わらせた罪は大きい。 フレッド・ジンネマンなんかが撮ってたら百万倍面白い映画になったろうに。もったいない。
一応、壁越しの恋愛に免じて1点おまけ。ま、あの彼の死だって「ストーリー上の御都合」に見えなくもないが。
※水泳選手の毛についてねこすけさんからご指摘いただきました。
「剃ります」
ありがとうございましたー
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