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[コメント] バーバー(2001/米)

とある現代人Xにまつわる○劇。(他作品のネタバレ要素も多少あり)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







美しいモノクロの画面や間の撮り方、些細なユーモア、役者の表情などほぼすべてに満足のいく素晴らしい出来映えであった。

ただストーリー自体は、産業化、都市化の進んだ20世紀初頭以来のアメリカの郊外を舞台にした、現代人の孤独についての伝統的な話を丁寧になぞった感がある。別にそれはそれでいいのだが(そもそもコーエン兄弟作品はそういうものが多いが)、今回私にはそれ以上のプラスアルファになるものは感じなかった。

とはいえ、主人公の床屋の抱える疎外感の描写には訴えかけてくるものがあるのは確か。彼の不幸は、自分がそこにいない存在であることに気づいてしまったこと、その不幸からの逃避を心の片隅のどこかで夢見ていたことなのではないだろうか。それは現代人の抱える不幸でもあり、卑近な例で言えば『アメリカン・ビューティー』などにも連なる問題である。ただこのような話は何度も観てきたという思いから、どうしてもそれ以上の(その立ち位置から出発した)「何か」を期待してしまう、本作はそういうのをもUFOや少女の性行為の描写として突き放してしまっているのかもしれないが。

そんな孤独な床屋に必要なものはやはり"sexual healing"だと勝手に感じてしまう私は、今更マーヴィン・ゲイに出遭ってのぼせているだけか、はたまたそれもUFOのようなものを身勝手に信奉しているだけなのだろう、きっと。(実際、床屋は数年間セックスレスで、ピアノの女の子にも性的な充足を求めていなかった点で、性的なものをも突き放してしまっている感がある。)

コメント部分で挙げた○の部分には、「悲」が入るのか「喜」が入るのか、おそらくどちらも入りうるのだろう。

*実は『私は貝になりたい』から着想を得ていたりして。そういえば床屋だし。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)kazby[*] ぱーこ[*]

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