[コメント] 春の日は過ぎゆく(2001/韓国=日=香港)
ホ・ジノ作品の素晴らしいところは「語らずに語る」ことができていることだと思う。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画もそう。二人の心理を事細かに描写したり、大げさに分かりやすく説明したりといった試みは一切されていない。断片をただ積み重ねることで、十分に「語られて」いる。
一つの恋が始まり、そして終わる、それは理屈で説明できるものではない。気がつかないうちにいつの間にか二人の心が近づき、理解できないうちに心が離れていく。愛しくて、もどかしくて、切ない。恋とはそういうものだ。
差し挟まれるサンウの祖母にまつわるエピソードが効果を生む。かつて夫の浮気で苦しんだ祖母も、認知症となって一途な愛のみに生きる。苦い記憶は昇華され、純粋で美しい愛の想い出だけが残り続ける。
二人は「自然の音」を収録する作業を通じて絆を深めていく。草原が風にそよぐ音、雪が静かに降り積もる音。自然の音に耳をすませるとき、人間の営みは大いなる宇宙の中のほんの一事象になってしまう。そんな深遠に思いを致したくなる、静かで美しい映画。
韓国の片田舎の街並みや風景が本当に美しい。同じ位置にカメラを据えて捉えたバス通りや路地のカットが、移ろいゆく二人の距離を定点観測しているようで。
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