[コメント] マトリックス リローデッド(2003/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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一作目、ネオでイエスの死と復活をなぞったマトリックス、さて、二作目は? と思ったら、プロテスタンティズムを持ってきたんですね。以下、ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を思い出しながらのレビューです。
米国建国者たちの宗教であるピューリタニズムは、カルヴァン派の原理主義であります。で、カルヴァン派と言えば、予定説です。人が救われるか救われないかはあらかじめ決まってるけど神様以外は知らないってやつ。はい、オラクルおばちゃんがカルヴァンに見えてきました。
で、本作にはなんと世界の設計者のおじちゃんまで出てきます。うわー、インテリジェント・デザイン仮説(世界は知的生命体が設計したとする反ダーウィン進化論の生命起源説。なんとアメリカの一部の州ではメジャーな理論で教科書にすべきだとの議論も起こっています)だあ。
父と子と精霊ならぬ、父(インテリジェント・デザイン)と母(予定説)から生まれたのがパンピーが集う世界(住人が仮想世界と気づかずに暮らしている世界。)ってわけね。はい、これで、マトリクスからの離脱はエクソダス(出エジプト)に位置づけられました。行き先はザイオン(ZIONつまりシオニズムのシオン)ですしね。
で、アメリカにはピューリタニズムの他にもう一つ建国期からの宗教的遺産があります。元祖ユニテリアンです。英文科の人はたぶん読んでるだろう「自然」とか書いたエマソンが有名ですね。元祖ユニテリアンは、直接に神を感じ取ろうとします。スピリチュアリズムな宗派です。アンチカルヴァニズムなわけです。マトリクス・リローデッドは、この、これまでは正反対でまじわらないとされてきたカルヴァン派とスピリチュアリズムとの対立をなんと、オラクルがネオを救世主と信じることで超克します。どしゃー。
そう設定することで、この瞬間も世界は創造されているとする多元的宇宙観とカルヴァニズムが一つになっちゃうわけです。アメリカ人が一つになったあ!
つーことは、何かい? シオン(ザイオン)を襲ってるのはイスラムかい? 文明の衝突? 確かにイスラムもキリスト教も一部聖典を同じくする「教典の民」なので、設定上無理はありませんね。
なんだかなあ。陳腐な恋愛劇、CGやカンフーのド派手なアクション、ど真ん中の宗教&社会哲学考で、どの層の顧客にも満足感を与えて帰すわけですか。そうですか。
アメリカを結束させる目的で作られた映画だとしたら、恐ろしいまでの成功と言えるんじゃないでしょうか。そして、キリスト教国の住人ではない我々は、これを「馬でもわかるアメリカ思想」として、離れた位置から楽しめるってわけです。
でもねー。つーか、こんなふうに真面目に見ちゃった私ですけど、よかったのかしら? さ、続き続き。To be concluded.
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