[コメント] ボウリング・フォー・コロンバイン(2002/カナダ=米)
否定にはじまり肯定に至った稀有なる痛快さ。
なんというか最初はムーアのユーモアセンスが炸裂する数々の表現が乱暴だなとかんじて、あまりムーアの言い分に聞く耳をもたなかったのだが、それはこの映画のマスメディアを注視せよというメッセージを、この映画自体にも投影したからなのかもしれない。それはつまりけっきょくこの映画に感化されていたのだということにのちに気がついた。
銃社会を肯定する理屈を自明のものとするアメリカ人の硬直した視点を、「わからない」から出発して他国との相対化のなかで銃犯罪の原因にメスを入れていくその反省的思考は、あたりまえをあたりまえとして簡単にかたづけない複眼的で能動的な思考態度をおしえてくれる。
ムーアは明確な結論を提示してはいないが、安易な結論へとかかるはしごを蹴飛ばして、人の思考を不安定にさせる力はもっている。そのことは銃社会に身を置かない私にとっても他人事ではなく、日常生活のあらゆるところで主体的に物事を考えることに意識的になることのおもしろさを教えてくれる。それはなにかとても大切なことのようであり、そのことに気づかせてくれたこの映画はムーアに対する否定・肯定に関わらず、たしかに観ることに意義があった。
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