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[コメント] 極北のナヌーク(1922/米)

冒頭で、勇者ナヌークは撮影後に餓死したことが伝えられる。観客はそのことを頭の隅に置きながら、幾分センチメンタルな心持ちで本編を見ることになる。初公開当時の観客と、異なる映画を見ているかも知れない、と思ってしまう。
ゑぎ

 さて、ファーストカットは勇者ナヌークの笑う顔。この出だしに心動かされる。妻は微笑みの人、ニーラ、と紹介される。

 近くの島にセイウチが出たという知らせを受け、男達で狩りに行く場面。銛を投げ、ロープを皆で引く。メスのセイウチが助けに来るという字幕が出るが、鮮明には撮れていない。残念。

 イグルーという氷の家の建設シーン。1時間程度で作るという。透明の氷で窓を最後に据え付ける。セイウチの牙のナイフで氷を切るのだが、気持ち良いほどよく切れる。イグルーの中では、皆、裸(少なくとも上半身裸)に毛皮をまとって寝る。女性は乳房が見える。家族の中に成人女性が2人いることが分かる。また、イグルーの中のシーンも、明らかに露天で撮影されているので、最初は屋内の設定であることが分からなかった。ラスト近くの吹雪の夜のシーンで理解する。つまり、光量が足りないので、屋内での様子を露天で再現しているのだ。確かに明らかな演出だが、だからと云って非難すべきではない。(分りづらいことはよろしくないが)

 終盤では、氷の下のアザラシを釣るシーンがハイライトだろう。こゝも、ロープの引っ張り合いが描かれる。ナヌークが何度も倒され、引きずられるのは、やり過ぎというか、演出臭い。しかし、あくまでも私は微笑ましく見る。格闘するナヌークを助けようと、画面奥の遠くの方に映っていた家族が皆で走ってやって来る待ちポジカットも、良いカットではあるが、段取りしたカットに違いない。勿論、こゝとて微笑ましい。その後の、釣り上げたアザラシの肉で興奮した橇犬たちの喧嘩のシーンは非常に強烈なドキュメンタリーになっている。そして、エンディングは、イグルーの中で吹雪の夜を過ごす場面になるのだが、外にいる橇犬たちが、雪まみれになりながら、じっと佇んでいるカットが、先の喧嘩のシーンがあるだけに、対比が効いて余計にいじらしく感じる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)3819695[*] ぽんしゅう[*]

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