[コメント] ファム・ファタール(2002/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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正直なところ、前半は退屈だった。
美人でセクシーなステレオタイプの悪女と、そんな女性の危険な香りを感じつつも惹き込まれていく、ちょっと癖のある男性。そんな映画は今までに何十本も観てきた。今作も型通りのサスペンスか、見所はデ・パルマの得意のカメラワークだけかな、と思いながらボーッと鑑賞していた。
そして終盤、驚いた。
「夢オチかいっ!」
夢オチなんて、どうにも方法が無くなった者だけがとる最終手段だと思っていた。普段、小説等でこれをやられると一気に興ざめしてしまう。
しかしこの作品に限っては、それが許せてしまうのだ。それは、夢オチ後の現実が輝いていたからではないだろうか。
ロールが自殺しようとする本物リリーを諭すシーン。初めてロールが自分の道を歩むべく、リリーだけでなく自分自身を励まし、前に進み始める場面だと解釈した。現実の7年後のロールや彼女を取り囲む世界は本当に美しく輝いており、とても後味の良いラストだった。
さて、私は見事に騙されたのだが、振り返ってみるといくつかのヒントやトリックがあった。その中でも、本物リリーの部屋のトリックは絶妙だった。
前半の夢の、リリーが自殺してしまう部屋の金魚の水槽は、外の落雷や雨音に合わせるかのように、水槽の底が破れ水がザバザバと流れ出していた。しかし後半、現実の水槽の水は動かない。このシーンは、今作中要所要所で用いていた、水の視覚効果と巧くマッチしていたように思う。
夢オチとはいえ、とても気持ちの良いどんでん返しだった。参りました、デ・パルマ監督。
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