[コメント] マトリックス レボリューションズ(2003/米)
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真実の探求のために敵を倒して倒して倒して倒して進むネオ(救世主)に、最後、スミスは問いかけます。存在は幻想なのになぜおまえは戦うのか、と。このセリフを聞いたとき、僕にはスミスが東洋思想に見えてしまった。だってそれって色即是空の世界観だよね。
いったんそう思えると、あとはもう、100体スミスは曼荼羅か八百万の神(顔が違ってたら五百羅漢だ!)を象徴させているようにしか思えない。
で、ネオがスミスに同化することを選んだシーンでは、ああ、アメリカはついに人格神たる唯一神信仰であるキリスト教の限界を受け入れたのか、と思って溜飲を下げたのでした。
ああ、それなのに、それなのに。いったん同化したかと見せかけて、内側からスミスを砕くだまし討ちだったなんて! 最後には世界を自分たちの手に取り戻すために仏教神道全部つぶす。私にはそういうメッセージに見えました。ジョエル・シルバーが「この作品が最後である」と言い切ったのは当然だろうと思いましたよ。
もちろん、そんなこと、明確な政治的意図があってシナリオに書いたわけじゃないでしょうけど、十二分に知的な現代アメリカ人らが誠実に己の宗教観、内面に向き合い、不特定多数に向けたエンターテイメントに仕上げた結果、そういうストーリーになっちゃったってことは、意図的であったよりもある意味もっと恐ろしいことかもしれません。
ジャパニメーションの世界観は全然マトリックスを超えてないよ。
我々は、自分の内面を掘り下げると同時に歴史を未来志向で遡航し、現実の世界を支配している思想と整合性を取りながら、わかりやすい娯楽スペクタクルに仕上げることに対して、もっと重視していい。ハリウッドSFを笑うのはそれからだよね。
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