[コメント] ミスティック・リバー(2003/米)
子供の頃のことを思うと胸が締め付けられることがある。意味もない時間を延々と過ごす。同じことを繰り返す。ケンカもするが仲直りもする。そしてまた同じ時間を意味もなく延々と過ごすのだ。その友人達も時間とともに変わる。その変化は生まれた頃から決められたものなのか・・・。そして友人を失う。遠い時間が過ぎて行く。その空白の時間はお互いを変えてしまう。
トラウマがある。親に虐待された。無意識の中にある恐怖。親の目。あるいは他人の目。自分も親と同じように子供を虐待するのではないかという恐怖。そしてそれが自分自身であることの恐怖。誰にも止められない決められたもの。変えようのない恐怖。自分への恐怖。
映画の怖さ。それは自分に対して押し寄せる記憶と重なる恐怖。自分に投影する恐怖。それがスクリーンから押し寄せてくる。これが映画の恐怖だ。
クリント・イーストウッドの映画は『マディソン群の橋』にも言えることだが、現実に投影する恐怖を表現する。
映画はいつも静かだ。音楽も静か。ハリウッド映画に見せる音楽で感情を表現するkとを極力避けている。この精神は画面の色調に現れている。灰色に包まれた街。夜の表情。その片側に照らされた半分の顔。デビッドの表情に二面性が現れている。それはトラウマに苛まれる者の恐怖だ。このティム・ロビンスの見事な演技。この内面性。この演技に吸い込まれてしまいそうだ。素晴らしい演技だ。
イーストウッドはこの映画で、現代人のトラウマを見事に表現しきった。それはこの街の事件で幼い頃に共有した頃の思いが、大人になって別々の社会で生きる者が集うトラウマなのだ。この恐怖を静かに静かにそして見事に描ききった。大人の映画だった。
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