[コメント] 鶴八鶴次郎(1938/日)
映画を見る至福。他愛ないとも云える物語を生きる長谷川一夫と山田五十鈴がまばゆく輝き出し、私たちの胸に深く切り込んでさえくるのは、まぎれもなく演出家の仕事のためだ。成瀬の映画は淡々となどしていない。まったく過剰な感情が横溢している。
そして、これは「煙草」の映画。長谷川らがくゆらせる紫煙にこそ「映画性」とでも呼ぶべきものが生々しく息づいている。成瀬と小津に共通するものとは「市民の生活を淡々と描く作風」などではなく、むしろこうした「煙草」やあるいは「厳密なカッティング・イン・アクション」といった細部ではないか。この共通項を偶然によるものと見ることは適当ではないだろう。それらは確かにひとつの細部に過ぎないが、そこには映画作家の「映画の核心に向かう態度」が顕れている。
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