[コメント] 千年女優(2002/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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今敏は星野の「妖女伝説」(漫画)を読んでいる筈だ。大事な人間(この場合は娘)を待って数百年ほどを生きてきたという老婆。それを「八百比丘尼」だといって取材にくる凸凹レポーターコンビ。一方、月面調査隊に加わった老爺は、短いあいだおのれの娘だった女を捜して月面を彷徨う。すなわち、「かぐや姫」である。かぐや姫と老爺が再会したときに彼はくずおれ、とうに諦めていた老婆も天に召される。
完璧にロマンティックに構築された物語である。
だが、この映画はどうだろう。映画の中を彷徨い、想い人を追いつづけるヒロインは、その時点では充分ロマンの中に生きていた。(いささかミスマッチな音楽がエンディングに至るまで興を殺いだが)
しかし、千年の恋を彼女に課した老婆は結局おのれの老いた姿に過ぎなかった。そして、あの「恋人を追いかける」娘だったおのれをこそ自分は好きだった、というきわめて現実的でクール極まりない台詞が語られるのだ。
なるほど、彼女が最初から言っていたとおり、彼女にとって役者などどうでもよかったのだ。彼女が大切にしていた鍵は悲恋を演出する小道具以上の意味はなく、そしてプラトニックな悲恋が似合わない年齢になったからこそ、彼女は鍵をやがて忘れ、綺麗さっぱり女優稼業から足を洗ったのだ。そういう生き方もあるだろう。だが、およそアニメーションでそこまで夢のない話を物語る意図がどうにも自分には解せなかった。
3点は一時の夢を与えてくれた作画スタッフに。媚びすぎずリアルに徹さず、アニメーターとしての仕事は最良の部類といってよいものだったと思う。
*蛇足
どうせ「全てはフィクション」と居直るつもりならば、ヒロインの少女期、大人、老女それぞれの声優を統一してもよかったのではないか。そういったフェイクこそがアニメーションならではの醍醐味と考えるのだが。例えば松島みのりとか、幅広い年代をこなせる声優はいるだろう。
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