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[コメント] ブラックブック(2006/オランダ=ベルギー=英=独)

当て〜にならな〜いお人は〜バカ〜よ〜 当て〜にする人〜 もっと バカ〜
G31

 ただ展開があるだけで、人も戦争も描かれない。かつ脈絡はないものだから、次第に呆れてくる。

 だが要するにバーホーベンという人は、昔からそういう映画を撮ってきた。ときどきエロを交えたりしながら、とにかく展開のリズミカルを身上とした人。そのリズミカルを愛した私がいるのも確かだ。

 かねてから漠然と気になっていたのは、いっつもこんな無内容な映画ばかり撮って、ときには自分が情けなくなったり恥ずかしくなったり、あるいは忸怩たる思いを抱えてたりしないのだろうか、ということだ。

 そんなときに、バーホーベン母国オランダに戻り、オランダを舞台にした第二次世界大戦の隠れざる物語を描く、の報。そうか、バーホーベンもついにやってくれるか、いや、意欲が空回りして独りよがりな作品に終わる可能性も大だけど、そこは手練手管のバーホーベンだ、物凄い傑作を物す可能性も大?と、私は膨らむ期待を抑えることができなかった。

 結論から言うと、彼はそんな引け目など微塵も感じてない。相も変らぬバーホーベン節だ。むしろ商売として、そんな期待感をも取り込んで観客動員に当て込もうくらいの目論見すらあったろう。

 もっともそういうのに引っ掛かる私みたいのがむしろ奇特なので、この作品の売り上げはさほど伸びなかったのじゃなかろうか。

 問題は、ただ展開があるのみで、いわゆる緩急というか序破急というか、リズムがない。全体としての均整に美しさがない。

 しかも、やたら長い。この長さも、描きたいことを詰め込むためといった必要からではなく、戦争を舞台にした大河的ドラマを描くには、こんくらいの長さが必要だろう的な、浅はかな計算から出ているに違いないのだ。テンポだけはいいが、2分前の展開と矛盾が生じていることなどお構いなしにただ転がっていく。

 以上を要するに、私の愛したバーホーベンは、ここにはいなかった。

60/100(07/07/17記)

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)トシ Orpheus ぽんしゅう[*] ina

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