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[コメント] キャタピラー(2010/日)

戦争をしたことのない人間には、戦争をした人間を軽蔑し、嫌悪する資格があるという、最低の反戦映画。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 なんでもかんでもいっしょくたにしてしまう感覚が嫌だ。

 この映画は、軍神サマ軍神サマと言ったって、その実態は食べて寝て排泄するだけの、芋虫と同じようなもんじゃないかと主張し、武功を立てた兵士を軍神と崇めるような精神をあざ嗤っている。だが人殺しを神と奉る愚かさと、戦争そのものの悪質さとは別だろう。少なくとも、軍神の功徳を単純に信じて有難がる老婦たちの素朴さは善だが、障害者の厄介な介護を、軍神を盾に妻一人に押し付ける家族たちの狡さは悪、くらいの仕分けは最低限必要だ。(若松の頭の中では逆の価値観なのかもしれないが。)

 例えば轢き逃げをした奴が、パトカーに追い掛けられた挙句、交通事故を起こして四肢を失ったとする。そいつは悪いことをしたのだからといって、そいつの状態を芋虫だと罵ることがいいことだろうか?

 数年前、ホームから落ちて線路で気を失った人を助けようとして、列車に轢かれ亡くなられた方がいた。例えば彼が一命を取りとめて、だが四肢を失ったとする。君は立派で凄いことをしたと徹底的に褒め称えるのは、また彼がそれを自分の励みや慰みにするのは、悪いことだろうか?

 傷痍軍人を神と崇める行為にもそういう作用がありうるのでは? この映画は、そういう点にまったく思いが至らない。

 もし、国民が戦争へ突き進むとしたら、反戦を唱える人たちが社会に対して無責任な人たちに見え始めたときではないだろうか。私は、本作は反戦映画として、最低の映画だと思う。

60/100(10/09/16記)

(評価:★2)

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