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[コメント] モンスター(2003/米=独)

鬼の慟哭。鬼の一分。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







健全な社会(表の社会)は、異形の者を利用し、切り捨てることで成り立っている。本作は、その一部始終を描くことで、社会がそのことに無自覚であることの悪と、また無自覚のふりをしている悪意を描くために鬼の一分を描いたものに他ならない。事実をベースに、「鬼」に転落していった人間の半生を描く、という手法もあったろうが、それとは別の切り口で描いていたことは面白いと思った。

セルビーを、純真だが世間を知らない子供として描いているが、一部に負を押し付けることで成立している健全さの正体を突きつけられた時、「でも悪いことはやっちゃだめだよ」とだけ繰り返す子供のように、純真で無知な立場をとりたいというのが正直社会の本音だろう。

余談だが、セロンの役作りでの表情を見ていて『真夜中のカーボーイ』のジョン・ボイトを連想してしまった(似てない?)。そう思うと、彼女に声をかけるリッチがダスティン・ホフマンに見えてこなくもない。2人の背の高低差、片手のギブスもねずみ(ホフマン)が片足を引きずっていたことと符合する気もするし、ビーチ(マイアミ?)を目指していたし…。違っていたのは、娼婦のヒモとして生きていこうとしようともねずみには矜持があった。「出会い」ばかりは本人の信念や努力ではなく「運命」なのだなあと思う次第です。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)サイモン64[*] IN4MATION[*] 死ぬまでシネマ[*] わっこ[*] TOMIMORI[*]

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