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[コメント] 龍三と七人の子分たち(2015/日)

たけしといえば、映画でもお笑いでも、なんといっても「間合い」の面白さだったが、本作は見ていてそれがすごく悪いところがいくつかあったのが残念。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







矢島健一が布団を売りつけにいったら、ジジイたちが部屋にたくさんいて「布団とってきます!」って部屋からあわてて出ていったあと、もうそのまま逃走するのが笑いとしてわかっているので、団地の階段をかけおりてきて、車に乗り込んで発進させるところまでがじれったいし、勝村政信が出勤で家から車を出すシーンで、車が右折して側面が現れると、片側に街宣車用の装飾テープが残っていることを見せているのに、会社についてから上司の徳井優がわざわざ勝村を呼び止め車の片側の確認を2人で見に行って、逆に何もないとかではなく、そのまままた剥がし残しが出てくるみたいなシーン。お笑いの理論としておかしい。たけしの笑い(というか思考全般)はとてもロジカルなわけだけど、どうしてこう撮るのか聞いてみたい気がする。もう年とって味覚が変わって、こういうぐだぐだなのがよくなったとか、なんか理由があるのだろうか? 藤竜也が萬田久子の部屋から逃げるシーンの恰好なんか逆に暴力的ですらある。100%観客が想像している恰好で逃げるわけだから、笑いの担保は藤竜也のその恰好をした芝居すべてに託されちゃってるわけだから。中尾彬がトイレで隠れるところがない、っていうのも、やる前からわかっちゃっていて、隠れるところがないっていうボケがはじまるまでがやっぱりじれったい。こんな感じ。思えば『菊次郎の夏』で細川ふみえがジャグリングを披露するシーンで、その場所が立入禁止という笑いなんだけど、アップからだんだんズームアウトして看板が見えてくるんだけど、「立」「入」「禁」「止」の「入」と「禁」がまず最初に見えてきちゃうから、もうあとがわかっちゃう。「立」と「止」が画面に現れるまでどうしていればいいのか、っていう、あれが「?」っていうのの最初だったかな。

中尾彬が見つかって、安田顕がバットを片手に持ってからが、ようやく予想外の展開。ボコってなってその次のカット、あれ予想できた人ってたぶんいないんじゃないか。そのあとの中尾彬を帯同しての襲撃シーンなんかは、やっぱりたけしじゃないと撮れない。さすが。やっぱりたけしの笑いって権威をおちょくる時が一番精彩を放っている。

あと音楽ですごく違和感のある選曲をしているシーンが二つ。冒頭玄関前の藤竜也と勝村夫婦のやりとりのあたりと、中尾彬が出前持ちに扮装してトイレに忍び込むときに流れる曲。場面とまったくそぐわないし、効果を考えての違和感でもないというすごい不思議な劇伴となっている。これも慶一さんか監督に意図を聞いてみたい。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)緑雨[*] けにろん[*]

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