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[コメント] ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016/米)

プレデター』を思い出した。
HAL9000

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前半と後半でここまで違うのか。

2回観て2回とも前半で寝落ちしたのに、この満足感はどういうことだろう笑。ただし2回目の鑑賞では前半を肯定的に観ることができたし、それは何と言ってもあの後半の圧倒的な面白さを知っているから。なのに落ちるんだから何か絶妙な催眠効果が施されているに違いない。

その前半に言及すると、初めに残念すぎるソウ・ゲレラの造形&描写のことについて。フォレスト・ウィテカーの無駄遣いっぷり含めてもはや笑えるレベルだったが、かつての英雄が戦場で疲弊し思想を歪め勇気を損なってしまうという構図は理解出来る。ソウやキャシアンの造形が現代のどのような事象を示唆しているかも含めて。問題はそれを物語の中でうまく整合出来なかったということで些かの「とってつけた感」は否めない。ソウは『反乱者たち』で再登場するとのことだが果たして。 残念なソウだが彼がジンを逞しく育てなければ「希望」は生まれなかったということは間違いないのだけどね。

そして何と言ってもジンのことがある。前半は彼女の動機付けに費やされるわけで、この主人公もまた両親を失うことになり、様々な状況の中で戦場に自ら赴く。こうした流れはEP4のルークと同じなのだけどジンはフォース感応は無い。しかし幼い頃からパルチザンで育つことで優れた兵士となり、また犯罪者でもある。しかしここでもやや残念なのがフェリシティ・ジョーンズにその雰囲気が皆無だということ。そこからスタートして大義だとか同盟とかに興味は無い主人公。これはいい。ルークのように冒険を求める無邪気さも無い。ではなぜキャシアンたちと行動するかというと自らの自由と後は父親に会いたいという心情がある。そして母と同様に父を目の前で失うのだけど、父を殺したのは反乱軍なのだ。だから後に素晴らしいが唐突すぎる演説をぶち上げるところとか「君はいったいどうなってるんだ」と思うよりないし、そこで彼女を掘り下げるのは危険だと思い至るわけ。もちろん父親の真意を聞いてその遺志を継いだという格好だけども、なんとも座りが悪い。

実際のところ今作をあれほどに感動的にしたのは彼ら以外のキャラクターであり、チアルート、ベイズ、ボーディそしてK-2SOに関してはケチのつけようが無い。絶妙なチープさを今作で発揮してくれた彼らの成果によって今後のスピンオフの方向性とそれなりの成功が決定づけられたと思う。 チアルートやベイズの功績はフォースの在処を偏在させたことにあるだろう。フォースを信仰や勇気、犠牲、友情といった誰もが持ちうるものに解釈してそれを表現してくれた。違うアプローチもあったかとも思えるがこれまでのSW世界に存在しなかった人々を登場させることに挑戦するというのはすなわちSW的なアプローチでもあるだろう。これは『フォースの覚醒』では出来なかったことだ。 ボーディやK-2SOは元帝国という立場であり、それは帝国のエリアに潜入するために必要な駒だ。まずそこからスタートして肉付けがされていったはずだが、とりわけボーディの果たした役割はとんでもなく大きい。彼とゲイレンがどのように接触していたかは想像もできないがどうやらカイバー・クリスタルの搬送あたりだろうか。ともかくいかにも気の良さそうなボーディを見込んでゲイレンはかねてからの計画を進めることにしたんだろうが正直ザルすぎる。でもボーディの素直さが無ければソウやジンに繋がることは不可能だっただろう。彼は一見頼りないのだが、それこそが彼の持ち味であり結構嘘が上手い。まあそうでなければ帝国軍で働くことなど無理だったはずで彼なりの処世術だったと言える。そして彼のように帝国軍の施設を見知っている者がいなければこの作戦は絶対に成功しなかった。一番頼りなさそうな彼が最も重要な要素であったことが良い。 K-2SOは捕獲されて反乱軍によって再プログラムされた。これはキャシアンと近い境遇でありその二人(あえて)が信頼しあっているのは頷ける。そしてこれまでSWで登場してきた量産タイプのドロイドの中でもサイズとパワーにおいて出色と思われる。その造形は「思ったことはすぐに口に出す」ということで彼の発言によってその時々の状況が極めて冷静に示されている。これでジョークも言えるようなら『インターステラー』のTARSだなと思えるし恐らくは影響があっただろう。思えばC-3POも似たような役割を果たしていたが、K-2SOは遥かに戦えるタイプなのでブラスターを打ちまくるあたりの頼もしさといったら。怖い敵が味方になったら頼もしいというのは『T2』の構図でもある。そして守るべき対象のために犠牲になるところも。これでグッとくるのはその2作と同様で折り紙付きなのだ。そしてK-2SOのタイプがその後のオリジナル3部作以降見られないのは帝国サイドが「危険」だと判断したからだろう。 ちなみにどうでもいいことだが、ハンマーヘッド・コルベットでスターデストロイヤーを押していくシーンを観て『逆襲のシャア』を思い出したね。

今作で最大の見所は何と言ってもダースベイダーの無双とあの命がけの設計図データのリレーだろう。「なぜフォースで奪わない!」というのはナシで。ちゃんと強いベイダーを見せてくれたのはかなり嬉しいし、ベン君がおじいちゃんに憧れるのも仕方ないかと思わせる。

撮り直しから4割が変更されたという噂だけれど、それが伺える内容だった。しかし結果として良い仕上がりになっていたのだからギャレス良くやったと言いたい。

(評価:★4)

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