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[コメント] ガンモ(1997/米)

甘美な頽廃。現代版『時計じかけのオレンジ』?!あるいは、島田雅彦的「郊外」のなれの果て。

もはや「郊外」とは「帝国」である(島田雅彦)。

80年代以降の、世界のあちこちに造成された郊外住宅地は、ディテイルの違いこそあるものの、どこか似たようなイメージを持ちながら、砂漠=資本主義のように拡がりつづけている(たとえばアフガニスタンにまでも!)。アメリカが発明した「郊外」は、まさにアメリカの支配の象徴として、世界中に溢れかえりはじめているのだ。ハーモニー・コリンが脚本を担当した『KIDS』のエイズのように(?)。そして、『ガンモ』で描かれたオハイオ州ジーニアの名もない街も、そんなありふれた孤独な「郊外」である。

「帝国は無意識の裾野(すその)に拡がる世界である。そこは懐かしさに満ちている」(『忘れられた帝国』)。

この街を観て、「懐かしさ」を感じてしまうような感性を持っている郊外=帝国の住民たち。セックスもめんど臭せぇ。ケンカもめんど臭せぇ。クソするのもめんど臭せぇ。要するに・・・・・・全部、めんどくせぇ。そんな無気力の砂漠を、刹那的にやりすごす人間たち。ハーモニー・コリンはジョン・カサヴェテスにいちばん影響を受けたと語っていたが、しかし『ガンモ』は『こわれゆく女』以上に病み、壊れている。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)寒山拾得[*] グラント・リー・バッファロー[*] tomcot[*]

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