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[コメント] グリーン・カード(1990/米)

ああ、なんてかっこいいんだドパルデュー。その大きくて雄弁な手。愁いをふくんだ、けれど自信や矜持にも満ちた瞳。これをセクシーと言わずしてなんと言おう。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







貧しい子どもたちにグリーンを、という活動について語るブロンディ。 「そんなことよりもっとすべきことがあるだろう。」とでも言わんばかりに、それをあっさり一刀両断するジョージ。

最初のバーガーキングがらみの場面。嬉々として土を運んだり苗などを植えたりしているブロンディたち。と、その様子を向かいのアパートから無表情にながめる(いかにも貧しい暮らしぶりの)女。

その(すっかり脳裏にこびりついていた)一瞬の女の表情が、ジョージの言葉とカチリとつながる。

けれど、だからと言ってこの映画は、それで(グリーンゲリラのような)活動自体を切り捨てるわけではない。そのやや挑発的とさえ思われる台詞や映像は、パーティーでの弾き語りシーンでやわらかにフォローもされる。そのあたりの「言いたいことは言うけれど」な監督の立ち位置というか柔軟さが好みだ。(そしてこの魅力はそのままジョージの人となりにも投影されている。)

最後もよい。ようやく本当のスタートラインに立ったふたり。これから彼らはどうなっていくのか、その後どうなったのか。それをあっさりは語らない、安易に示唆したりはしない謙虚さ。そこにもとても誠実なものを感じる。現実にもこのような人々(強制送還される人とその恋人)が大勢いるだろうことを考えると、軽々しく楽天的なラストにまとめあげるわけにはいかないだろうから。

ただ、基本的な物語については、ブロンディが偽装結婚した理由に切実さがちっとも感じられないことや、ふたりの気持ちが寄りそっていく過程が急展開過ぎてつらい。法的にも穴だらけなような気がしてしょうがない。

すくなくとも、あのようないかにも疑われやすそうな条件下にある(もともと何のビザで入国したわけ?ただの観光ビザなんじゃないの?)うえに限定グリーンカード(*1)しか持っていないと思われる人が、第三国への海外渡航を頻繁にできるはずはないと思う。普通は自国に帰ることさえ難しいだろうに、「アフリカに行ってました」だなどという嘘が普通に受け入れられているだなんて(しかも調査員にまで!)、それだけでもう馬鹿馬鹿しくなってくる。

(偽装結婚ではないけれど)ジョージと似た状況からやっとこさっとこグリーンカードをとった友人の話。その体験談とこの映画での体験談の差にちょっと驚きつつ、まさかジョージは西洋人で私の友人はアジア人だからなんて理由じゃないよね。なんてことまでつい考えてしまう。

「ダンナさんはアフリカ人なのですか?」といぶかしげに聞き、「いいえ、フランス人です。」との答えにあからさまに安堵した大家サイド一同。その面接の場面も、けっこう意味深だったしね…。

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(*1)米国市民との婚姻によるグリーンカードは、偽装結婚防止のため2年間のみ有効の限定グリーンカードをまず発行されるそうです。つまり、正式なグリーンカードは期間満了後に審査を経て得られるとのこと。それとも、この映画が制作された頃は手続きがもっと簡単だったのかなぁ。<くわしい人、教えて。

(評価:★4)

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