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[コメント] 墨攻(2006/中国=日=香港=韓国)

予想を覆す骨太な歴史ドラマだった。
死ぬまでシネマ

実際の墨家がこのような働きをしていたとは思わないが、広大な中国大陸の戦乱の中で<兼愛>を説くというのはかように過酷なものなのか、と後半は呻き通しだった。『Hero <英雄>』『Lovers』『Promise<無極>』『the Myth<神話>』とアルファベットばかり踊る中国の戦乱ドラマの中で、ドーンと『墨攻』と墨書された題名、それが一線を画す覚悟か。

(言わずもがなとは思うが念の為付け加えると、題名の『墨攻』は無論墨守をもじったものだろう。「墨守」とは決めた事を固く守るという意味で「死守」や「遵守」に近いが、決められた事を守ると言うより、より「自らの信念を持って貫く」という意味合いが強いように思われる。「墨守」は解るがでは「墨攻」とは何か。原作については漫画を連載中に数話読んだに過ぎないので断定的な事を言うのは止めておくが、この映画を観たひとは「非攻」を掲げている筈の墨家の「攻め」とはなにか、について考えて欲しいと思う。)

アンディ=ラウ、骨太でありながら打ち拉がれ彷徨う主人公を演じ、見事。アン=ソンギワン=チーウェンも癖のある太い演技を見せる中で、当初今ひとつ間抜け顔に思われたチェ=シウォンファン=ビンビン、そしてウー=チーロンがドラマの中で重要な役所を任せられ、それを演じ切っているのも佳かった。この映画に対する信念とヴィジョンが監督に無ければ、彼らはありきたりの添えものに終わっていただろう。俳優たちを成長させた映画だったのではないかと思われる。

城攻めの<智略>を見せながら、<武>とは何なのかと本質を問う。平和主義を国是とする我々日本国民も覚悟を迫られる映画である。(ぼくはこの映画にアン=ソンギが出演してくれている事に深く感謝の念を感ずる。日本人が創った戦乱の世に於ける「非攻・兼愛の徒」の物語を、香港・中・台・韓・日のスタッフが結集して映画化する事、その事自体に強い決意表明がある事は言うまでもない。)

(評価:★4)

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