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[コメント] 羅生門(1950/日)

この展開を誰が想像しましたでしょう。芸術そのもの。雨、雨、雨。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 モノクロを強調するために墨汁を雨に混ぜた話しは有名。  ボレロ、太陽、雨、赤子、貧困飢餓、汗・・・様々な映像が鮮明に脳裏に焼き付けられます。  この作品がでいるまで、時代劇は主人公がバッサバッサと敵を斬りまくるというもんでしたが、ここではお互い情けないほど腰が引けていてリアリティーを感じます。  永田雅一はこれを「わからない」といって興業に力を入れなかった。そんな映画が歴史に残るんだから、不思議だねえ。

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東京都写真美術館で黒澤明監督の「絵コンテ」展が開催されているのにあわせて上映していました。

大きい画面でこの映画を拝見するのは、実を申しますと初めてでした。

この間、黒澤監督生誕100年イベントもあって、さまざまな本を読ませていただいた上でこの映画を再見したんですけど、当時としては本当に画期的というか、予想を超えた違いのある映画だったようですね。

宮川一夫さんのカメラも、確かに映画館で見ますと、その印象が強烈でした。

特に三船敏郎さんと京マチ子さんが接吻してるシーンの向こうに一瞬輝く太陽。このシーンはモンタージュだとばかり思っていましたが、実際にほんの一瞬太陽が写るんですよね。これはすごいシーンです。

そして三船敏郎さんと森雅之さんの、殺陣というのはいかにも情けない戦いぶり。これもリアルさ満点ですね。形式美を覆して、あくまでもリアリズムを追求しようとした監督の意思がやっとわかったような気がします。

(四方田犬彦さんの著書に詳しく書かれています。)

見終わった後、観客は少なかったのですが、場内から拍手が沸き起こりました。

やはり映画は映画館で見たいですね。

感動と驚きの瞬間でした。

2010/10/03 東京都写真美術館 ホール

(評価:★5)

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