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[コメント] めぐりあう時間たち(2002/米)

役者の演技がすごすぎます。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







たちどころに並ぶすごい女優陣に圧倒される映画でした。

ここまで完成度の高い映画は、話の筋とか全体像を語るより、素直に映画の素材となった俳優陣の敬意を表するべきでしょう。

まずはニコール・キッドマン。これ本当に彼女なの?と思わせるほど面影が異なる演技ですね。役柄はまさに彼女にぴったりの神経質でデリケートな女性。しかもバージニア・ウルフという作家のお話ですので、彼女にとってはうってつけの役柄であることは認めます。

彼女の孤高の演技はこれまでのいずれの役柄とも雰囲気を異にしるものでした。メークも全く異なるものになっていましたね。アカデミー賞は納得です。

この映画に出てくる3人主要な女性たちでいうと、むしろメリル・ストリープが本来ならもっとも”バージニア・ウルフを演じるのにふさわしいと思われますが、彼女を現代の女性に置き換えることで、逆にこの映画の品格が保たれましたね。

この二人の間の時代を演じるのがジュリアン・ムーア。平凡な主婦でありながら、『ダロウェイ夫人』の作者であるバージニア・ウルフにほれ込み、自らの人生を大きく逸脱させてしまう、これもまたデリケートな役柄ですね。彼女の考えがこの映画の時代を結ぶ大変難しい役柄です。

ジュリアン・ムーアは老婆の役としても登場します。これは自分の息子(エド・ハリス)の自殺を知って母親として駆けつけるんですね。

このあたりは最後の最後にならないとなかなか全体像が見えてこないので、何度か見直すときっとより楽しく見ることができるんでしょうね。

それにしても、古くから女性のこのスタンスは、今現在になって日本人女性にも重なる面が増えてきたような気がします。それは、女性が家で母親役だけを演じる時代から、社会に出て働く女性に変化したことによるものだと思うんですね。

そいういう意味で、このジュリアン・ムーア演じる、作家に恋する主婦の役が、ちょうど今の日本人女性のマジョリティに符号するようなきがしています。

スティーブン・ダルトリー監督の作品は、『リトル・ダンサー』に続いて2本目。最近では『愛を読むひと』がヒットしましたね。彼はイギリス人らしい伝統と規律の世界から、ぞれを打破する(『リトルダンサー』)姿勢や崩れ落ちる(本作)のように、とても挑戦的な姿勢に好感が持てますね。

規律に挑戦しながらも下品にならず、品格をもって正直に素材や題材と対峙する姿勢がうかがえますね。才能を感じます。

それからエド・ハリスの狂気的な演技もすばらしいですね。彼に限らず、この映画を支える脇役陣もすばらしい役者をそろえていますね。その中でも特にエド・ハリスが突出しています。アカデミー賞にノミネートされたのもうなづけますね。

そういえば、先ごろJ・D・サリンジャーが亡くなりました。作家としては世界的に有名でも、50年近い隠遁生活を送った方ですね。

先日見た『放浪記』の林芙美子にしても、バージニア・ウルフにしても、創造する立場の人は、ある意味狂気と背中合わせに生きていることが感じられます。

そんな作家感を冷静に紐解き、長い年月を要する映画として見事に組み立てられていましたね。

2010/01/29(自宅)

(評価:★4)

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