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[コメント] 愚行録(2016/日)

画面に温度(温もり)のようなものがあるとすれば、過去は常温で、現在は徹底した低温、いや脱温で描かれる。撮影監督ピオトル・ニエミイスキの無機な質感と大間々昂の不穏な旋律が石川慶の脱ウェットな語り口を支え、邦画の悪しき慣習の打破を試みる。
ぽんしゅう

このドライな筆致は、同じ現代日本の歪みに材をとったミステリー・サスペンスでも李相日の『悪人』や『怒り』(奇しくもどれも妻夫木だ)の喜怒哀楽を増幅させる感情演出の対極に位置している。

常温にすら混ざり合うことの出来なかった、温もりを奪われた者たちは、たがいに身を寄せ自己発熱するしか術がなかったのだ。

そんな日常に埋もれてしまった“階級ギャップ”を、現実を「常温」のまま保存しつつ「脱温」者の冷静な視線で観察するかのような方法で、等身大のミステリーとしてあぶり出そうと試みる。この語り口は、今の邦画界にあって稀有かつ貴重だと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)濡れ鼠

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