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[コメント] 生きる(1952/日)

社会派黒澤の面目躍如。表現派黒澤の圧倒的熱量。志村喬の見開いた眼。映画的技巧を尽くした傑作。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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木の窓枠のガラス窓、捻ってつける天井から下がっている白熱電球。障子戸の室内。忘れていたけどこれらに染み付いている子供時代の感情。初めは写っている物に反応して見ていた。役所をたらい回しされて陳情に応える役人の顔顔顔、これがそれぞれいかにもそのままの人物描写で驚いた。

一つ一つのシーンに手抜きがなく構図も決めてまったく息が詰まる。志村喬と伊藤雄之助の地獄の祝祭巡り。小田切みきとの形の上では平凡なデート。志村喬の告白と生き様への大展開とhappy birthdayの名シーン。いずれも目を見張る映画的シーンの連続だ。描写されるのは凡庸な話だ。がんを告知されたと思った主人公が生きる意味を求めて彷徨う話。

話としては終わったところから始まる通夜のシーンが企に満ちた脚本ですごい。助役たちが立ち上がって退出するところで終りにしてもいいのに、それから延々と飲み会の描写が続く。そして志村喬が公園を実現させるまでと各人の感想をこれでもかというネチっこさで描きこんでいく。この持続力にはまいってしまう。昭和の日本人を知り抜いた黒澤の眼力と表現力をあらためて感じた。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ペンクロフ[*] 緑雨[*]

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