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[コメント] 三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020/日)

意外と紳士的な三島由紀夫と傍若無人な全共闘学生という切り取り方。
ぱーこ

この年1969年は東大と教育大(現筑波大)の入試が中止になった。だからこの対話のあった東大駒場教養学部には新入生はいなかった。私はこの年の入試も不合格で浪人は3年目に突入していた。世の中は騒然としていたが、浪人の私には無関係だった。もちろん先に大学生になった友人とデモに行ったりしては見たが、所詮彼らは大学生という身分あっての学生運動である。この対話もニュースで見た。本も買った。しかし TBSのカメラが入っていたのは知らなかった。

壇上でタバコを吸いながらやりとりし、観客を挑発し、時に和やかに話しているのは当時の雰囲気をよくあらわしている。三島の仮面の告白はおもしろかったが、遺作4部作は絢爛豪華な描写が続くだけで所詮私とは別世界だった。この映画で現在の芥の「國の言葉が違う」というインタビュアーに対する回答が収穫だった。ともかく彼は当時の路線の上を走っているようだった。東大全共闘議長の山本義孝も物理学における世界観の歴史的展開をあつかった労作があるから、ある意味当時からの問題意識を継続させている。

翌年1970年私は三浪の後なんとか合格し家出して大学の寮に入った。寮の食堂で三島の事件を知った。50年目の真実、という題であるが、当時も今も誰にとっても同じ真実というものはない。その意味でこの映画は誰にとっての真実かをあきらかにしていない、と思う。

(評価:★4)

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