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[コメント] 集団左遷(1994/日)

私の知り得る限りの中で「最も恐ろしく、残酷で、かつ残酷で残酷な映画」。
sawa:38

サラリーマンは「自由」である。会社が嫌なら辞めちまえばいい。・・・そう思ってた。

初見は10年前だった。東証1部上場企業の「自称ヤリ手のサラリーマン」だった私は、何の感慨もなく鑑賞し、感想すら覚えていない。当時は自分が会社を支えてるんだ位の気概があったもんで・・・

その直後、辞表を叩きつけ退職。その後は退職癖がついてしまい、僅かな期間に会社を転々とした。

しかし、現在40歳を超え、家族を持つような境遇になった今、この映画を単なる娯楽作 として眺めるような余裕はない。ココには幽霊や怪獣といった非現実的な怖さはない。あまりにも身近なリアルな恐怖がある。

永遠に続くかと思っていた「家庭」が突然に崩壊させられるリストラ。収入の途絶は家族の環境を激変させるだろう。そして戦力外という通告は人間としての「プライド」を踏みにじる。

「選ばれなかった者達」を待っているのは金銭的な苦労もさることながら、職場や家庭からの「同情」だ。「同情」ほど辛いものは無い。

こんな事言ってると、若い人からみれば、「負け犬年寄りのビビリ」としか思われないだろうなぁ。でもねぇ、私も10年前はそうだったんだよなぁ。怖いもん知らずで会社も上司も関係なかった。好き勝手に言いたい放題だった。それが今では「口は災いの元」とばかり、すっかり去勢されたようだ。

言い換えると、「家庭」ってのはそれほど大事だし、「幸せ」ってのはそれほどデリケートだって事に気づいたのかもしれない。

まぁとにかく、リストラってのは怖い。天災ならば偶発的にやってきて、災難だったと諦めることも出来るが、リストラってのは「会社」っていう顔見知りの奴が確固たる意思を持って襲い掛かってくるんだ。

この映画、中年にとってはあまりにも身近過ぎるリアルが描かれているのである。だから本当に怖い。

しかし、この映画の見所は、最後のチャンスにあたって「仕事の面白さ」をやっと発見していく過程なのかもしれない。だってそうでも思わないと残酷で残酷でやり切れないでしょう?

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] 代参の男[*] 新人王赤星

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