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[コメント] ブリキの太鼓(1979/独=仏=ポーランド=ユーゴスラビア)

大人たちの狂った時代に目をそむけるように成長を止めた少年。ドイツ人のナチス時代に対する自虐史観なのだろうか?
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ドイツ人ならば誰しもが「歴史」に対して「負のイメージ」を負わされている。出来る事ならば消し去りたい過去。

ドイツ人>ポーランド人>カシュガイ人>ユダヤ人

当時、あの地域でははっきりとした人種の階級が存在していた。自らより弱い民族を差別する事で、アイデンティティーを確立せざるを得なかった時代。悲劇の国家ポーランドも、最近の調査でユダヤ人を集団虐殺していたという事実が暴露されるにおよび「悲劇の連鎖」は止まらなくなっている。

ドイツ人もポーランド人も、あの当時の「歴史」に目を瞑りたいはずだ。「歴史」には無関係だった子供のように・・・

無垢な子供の視線で「歴史」を見ると、そこには狂った・グロテスクな大人たちが見えた。けして一部のナチス党員の仕業ではなく、ごく一般の普通の人々が率先して「歴史」を作っていった過程が見えた。

ソビエト軍の侵攻により戦いは終結し、彼は成長を始める。これからはもう汚い「歴史」を見る事がないからだろう。彼は「西」へ避難していった。ここで映画は終わる。

この後、彼はどうなるのだろう?自由な西側で順調に大人になっていくのだろうか?私の願いは、かつて優しく接してくれた「おもちゃ屋のおじさん」の死を忘れないで成長していって欲しいという事だ。

ユダヤ人だったおじさんの同胞が、念願の自前の国を持てるようになったのに、同時に同胞はやっと差別出来る人種をも見つけたのだ。アラブという民を相手に再び「歴史」が作り出されていった。

恐らくまた彼は成長を止めているんじゃないだろうか?どこかの国で・・・

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)甘崎庵[*] 埴猪口[*] KADAGIO[*] 町田 uyo

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