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[コメント] 下町の太陽(1963/日)

車さくらの原点
TOMIMORI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







花やしきで北良介(勝呂誉)と町子(倍賞千恵子)が楽しそうに語り合ってるシーン。二人の周りを飛行機型の乗り物が回っている。

「体中から塩吹いちゃってよ。塩鮭だよ。」「あはははは!」

道夫(早川保)と町子(倍賞千恵子)が荒川の土手で深刻そうな顔して話すシーン。変な模型飛行機がブンブンと回りながら飛んでいる。

「人のことなんて考えてたら何もできやしないよ。自分のことで精一杯じゃないか。」

両者とも仕事に一途な姿勢では共通しているが、道夫の方は出世が目的であるという意味では異なる。 面白い対比だと思う。特に後者の方なんて模型飛行機の音が道夫の必死さを煽るんだな。それに比べて花やしきの夜景の綺麗なこと。

北良介は町子が将来のことを聞いても答えずに逆に聞き返していたのを見ると、道夫のように明確な将来のビジョンなど持っていない感じがする。ましてや同僚のようにいつ体を壊してもおかしくない仕事だ。はたから見ても今はただ自分の熱い想いをぶつけているだけにも見える。道夫のように現実的ではないのだ。 それでも町子はそんな男を好きになるのだろう。

町子は旦那に出世を望むような女ではなく、人を押しのけてまで幸せになる必要はないと思っているのだろう。 長年親しんだ下町に住めるだけで幸せなのかもしれない。 これは寅さん映画のさくらさんそのままではなかろうか。

そういえば道夫が面接試験の時に「連帯感に基づく競争意識」という矛盾した理想論を展開していたが、上司に笑われていたな。彼もやがて競争社会に疲れて町子と下町で気楽に暮らせばよかったと思う日が来るのであろうか。

(評価:★4)

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