主人公の折れた心を戻すきっかけとなる遺書のことだが、僕はあれほど心を打たれた遺書を未だかつて読んだことがない（円谷幸吉の遺書もいいが*1）。家族へのメッセージと共に今までの人生を振り返り、しだいに運命を受け入れてゆくまでの過程が、あの291文字の中に凝縮されており、これほど様々なことを考えさせてくれる文章はあまりない。それをメインに据えたことはよかったとは思うが、あの遺書で主人公がどう立ち直り、その後の家族との関係にどう影響を与えたかまで描いて欲しかった。

ちなみに事故当時の僕は夏休みで、北海道の祖母の家に遊びに行っていたのだが、ちょうど事故が起きた翌日に北海道から日本航空で帰ってきたのだった。僕なら飛行機をキャンセルさせて夜行列車で帰すと思うが、うちの親は「連続して落ちるわけないと思った。」とそれほど心配していなかったらしい。そんなことどうでもいいが。

*1　『駅　ＳＴＡＴＩＯＮ (1981/日)』で引用されている。