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[コメント] クライマーズ・ハイ(2008/日)

いずれもが独自の強い行動規範を持った人間達のぶつかりあいが面白い。メールもケータイもマネジメントもない80年代的職場の葛藤は正直ちょっぴり羨ましい。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







だだっ広いフロア全体に向かって、一社員が「本日の天気は〜」かなんか告知したりするところとかちょっといいよね。皆黙々と自分の仕事している中で、一瞬生まれる一体感みたいな。

この監督は、目的を共有する集団内での立場や信念の違いによる人間同士の衝突や、一転、団結して事態に立ち向かうみたいな群集活劇が、本当にうまいなあ、好きなんだなあ、と思う。

編集部と販売部が階段でおしくら饅頭したり、マギーがスライディングしたり、社長が車椅子に乗り換える横を堺正人が自転車で横切ったり、スクープを抜く工作を部長に持ちかけるため、別の幹部2人を牽制するため仲間2人とオフィスを不自然に回遊したり、何度も電話を借りに戻ったり。これは、たくさんの人が怒鳴ったり走ったりする楽しさで、スポーツを見る興奮に近い。「大久保連赤(大久保清連続殺人・連合赤軍リンチ殺人)」を上回る事件になることを上層部は焦っているんだ、なんてことは本来なら面と向かって口に出すよりかは、雰囲気で滲ませて欲しいし、実際だってそうのように思うが、吠えまくるティストはスポーツとしては活力があっていいと思う。

ただ所詮は功名一番という特殊な世界の内の話であって、一歩外側から見たらその葛藤も、ただの喧騒である。良くも悪くも、この監督は、場の狂騒をあくまでその内側限定で描くところにあるのだろう。スポーツのLIVEをスタジアムの外から見たって面白くないわけだし。

この映画はその本編たるスポーツの場面だけがすこぶる面白かった。各人の行動規範による衝突そのものが面白かったわけで、その行動規範のもととなる個人の内面には向かわない。もちろん全員が全員に向かわなくっていいわけなのだが、主人公だけは別だろうと思う。主人公の行動規範の元となるものに向かわなければ、社長や息子とのドラマや、クライマーの理念など必要なくなってしまう。ていうか何のための後日談?

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)死ぬまでシネマ[*] Ryu-Zen[*] 緑雨[*] uyo[*] 林田乃丞[*] けにろん[*]

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