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[コメント] アルプススタンドのはしの方(2020/日)

甲子園で自校の応援に来ている生徒たちの関係性が、試合の時間の間に変化していく。
なつめ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







その舞台はアルプススタンドのはしの方とスタンドに近い廊下、ほぼ2つの場面で展開される、なんとなく演劇的なつくり。彼らの会話で背景・関係がわかり、彼らの会話に出てくる野球部のメンバーの名前が記憶に留まることになる。会話だけで飽きさせず魅了していく手腕が素晴らしい。

応援は遠くからなのになぜ届くんだろう。LINEのメッセージを送ろうとしてやめにした久住さんの振る舞いは正しくて、たぶんそれは“届かない”。しかし、彼女が所属する吹奏楽部の応援の演奏は確かに届いたと私が感じるのは何故? 遠くから声を張り上げて応援したくなるのは何故?

藤野くんは野球部を途中でやめてしまったことを「俺の方が正しいよな?」と発言し、安田あすはは同意した。安田あすはの立場だったら大抵の人が同意するだろう。でも、私の心は「正しく“は”ないよ」と言う。そして藤野くんも本当は“正しい”とは思っていない。しかし、後悔もしていない。

リアルとお伽噺のバランスがとてもよい。ラスト、何年後かの再会時にヤノくんの名前を聞くのが嬉しく、その活躍に思いがけず涙が出そうになって自分で驚いた。「続けた者が最後に勝つ」なんてことは実際にはそうそうあるわけではない。でも、この物語の中でのヤノくんはそうであってくれて嬉しかった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)KEI ぽんしゅう[*] ゑぎ[*] ペペロンチーノ[*]

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