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[コメント] アパートの鍵貸します(1960/米)

私の考えた、絶対に売れない邦題。『アメリカ一のゴマすり男』…(ああ、ビリー・ワイルダー追悼になってない)
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ジャンルとしては社会派ラブコメになるのかな?恋愛と出世の板挟みになって悩むバドの姿はむしろ日本でこそ受け入れられやすいと思う。事実この亜流のテレビドラマは山ほど日本で作られていたため、この映画との出会いは私にとっては少々不幸だった。

 残念なことに新味が感じられなかったのだ。なんだい、そんなストーリーかい。ってな感じで、例のパスタをテニス・ラケットで上げるシーンも、初めて観た割にはさほどの感慨も受けず。特に冒頭のいかにもセットですと言った感じの大仰な舞台設定には、ちょっと乗り切れなかった。

 しかし、観進んでいく内、引き込まれていった。ジャック=レモンシャーリー=マクレーンの二人の演技の巧さに、二人を中心にして回る撮影に、見事な音楽に、いつのまにやら本当に引き込まれたのである。これは間違いなく映画であり、きちっと計算されたカメラアングルと、台詞の軽妙さ、そして二人の魅力。気が付いたら、「当たり前」と思っていた物語が全然当たり前でなかった事が分かってしまった。

 レモン、マクレーンの魅力こそがこの映画の醍醐味だが、その魅力を最大限活かすためにこそ、この映画は最大の努力を払っている。周りの人間も、更に小道具に至るまできっちりと作り上げていて、結果として見事に二人にスポットが当てられ続けている訳だ。それだけに二人には相当な期待が寄せられて然りだが、充分すぎる程の魅力を見せ付けてくれた。あれだけの事があっても依然として健在のフランの可憐さ、直情的ながら、何とか物事を軽く見ようとしていつも苦労するバド。歯がゆい二人の関係が見事な演技によって演じられる。

 最後の最後に至るまで、二人の関係は平行線のまま。フランを引き留めようにも、バドにはそれに負って立つものがない。その辺りのいじまさが、何とも言えぬ焦りを醸して良い。ラストは分かってるんだけど、それでも最後の大団円はジーンとくる。とにかく二人に惜しみない拍手を送りたい。

 レモンに続き、ワイルダーも逝く。映画史上、間違いなくこのコンビは一つの時代を作り上げた。哀悼の意を表したい。(やっぱ、あのコメントは止めるべきだっただろうか?)

(評価:★4)

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