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[コメント] ピンポン(2002/日)

実は中学時代、私は卓球部に所属しており、“ダブルスで”地区大会二位になったこともあった。あの時の情熱を思い起こしつつ観ました。それに何より、面白い。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 松本大洋原作の漫画を映画化した作品。この漫画家、独特の画風を持ち、それ故に目を惹くが、それだけじゃなくて内容も確かに面白い。「ピンポン」は特に毎週楽しみにしていた作品でもあった。

 卓球はノスタルジーを喚起させる。ただ、どうしても卓球のイメージと言うのは良くない。有り体に言ってしまえば「ダサい」。外は燦々と光が降り注ぎ、心地よい風が吹いていても、敢えてそれに背を向けて室内灯の光の中、停滞した空気の中で行わなければならないスポーツだ。今だにあの不快指数の極端に高い室内と止まらない汗の事を思い出せる。

 そんな卓球を格好良く描けた作品というのは普通ない。大体スポーツ漫画で卓球を題材に取ろうなど、考える漫画家自体がいなかった。それを敢えて描いて、しかも凄く面白かった。松本大洋はたいした漫画家だと思っていた。

 それが実写に。しかも主演は買っている窪塚洋介か。これは観てみなければ。

 それでとっ始めから感心。面白い。

 最近の邦画、本当に質が高くなった事を印象づける。これまでの邦画では、“観て良かった”と思えた作品は多かったし、“面白かった”と思えた作品もある。だけど、まさに観ている現在進行形で“面白い”と思える作品はなかなかお目にかかれなかった(黒澤映画は別格としても)。

 しかし最近の作品、特に同じ窪塚洋平主演の『GO』とか、『バトル・ロワイヤル』とか、観ている時に現在進行形で“面白い”と思えた。

 この作品は又別な意味で面白い。とにかく格好良い。格好良く卓球やってる姿を描けるって事だけで感心できた。

 題材としては古くさいはずの熱血が格好良く、挫折と再生の部分が暗くならずにしっかり描けていたのも良い。やってることは昔から変わらないのに、全く違った目で観ることができる。上映時間は二時間ほどだったが、全く飽きることがなかった。

 キャラクターが魅力に溢れ(負けず嫌いのペコ、クールなスマイル、情熱を無理に押さえ込もうとするアクマ、それに物事を達観して見つめる孔とか明らかに変な性格の顧問の小泉(原作とは全く異なった姿は、竹中直人が培ってきたキャラクターそのもの)、オババとか)、しかも彼ら全員手を抜かずに、それぞれ格好良い見せ場を作ってる。とにかく格好良さにこだわった対決シーンも嬉しい。躍動感も充分すぎるほどある。

 良い作品を見せてもらった。

 ただ、それでもやっぱりちょっと気になることが二、三。一応は挙げておこう。

 先ず卓球というのは竹中直人演じる小泉の台詞にもあったが、「人間の反射神経ギリギリで身体を反応させるスポーツ」だ。(事実中学時代、反復横跳びやらせたら、卓球部に敵うのはいなかった)これは身体だけを意味しない。意外と思われるかも知れないが、卓球において重要なのは首と目の動きだ。

 ラリーになるとコンマ1秒の反応を強いられ続けるため、めまぐるしく位置が変化する。卓球台の位置と自分のいる場所、そしてボールの動きを見るために首がとにかく良く動く。特にプロになるとラケットに球が当たる瞬間まで目は球を見ている。そしてインパクトの瞬間には首は球が行くべき方向に向いていなければならない。その目を動かすためにも首の動きは重要になるし、スマッシュを打った次の瞬間には帰ってくる球を見ていなければならないので、首に非常に強い負荷がかかる。

 それだけ大切な首の動きを、主演の窪塚は全くしてなかった。彼の目はひたすら前に固定されていた。他のキャラはそこそこ出来てたんだけどねえ…

 もう一つ挙げると、メーカーのロゴが見えすぎると言うことか?卓球用品はいくつかのメーカーがあり、しかも卓球球とか台とかになると、ニッタクというメーカーが主流なのに、何から何までバタフライというメーカーばかり。ここまで露骨に企業宣伝やられると、ちょっと嫌だぞ(ちなみに私の中学時代はユニフォームがニッタク、ラケット及びラケットケースはTSP、ラバーだけがバタフライだった。一方映画では全員が、全てバタフライに統一。)まあ、別に気にしなければ良いだけの話だけど(笑)

(評価:★4)

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