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[コメント] クローバーフィールド HAKAISHA(2008/米)

突如襲いかるカタストロフィに逃げ惑い、また恋人を捜すために斜めに折れかかったビルに突入する人間たちの目をカメラに固定させ、あくまで彼らの目線での一部始終を撮影しているハンディカメラ風に見据えた話題作だ。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







であるからして、写っている光景・風景は彼らの動揺・不安・安全への願いの気持がそのままダイレクトに伝わっている構成である。だから怪獣映画でよくあるような、怪獣の全体像・攻撃シーンを迫力ある映像に収めるといったことはしない。

なぜなら、逃げ惑っている彼らからしたら、怪獣から離れることがまず第一の行動であるからだ。そのため、怪獣もふと現れたりし、現れるときには当人にとっては恐怖の再来なのだ。そんなカメラワークが臨場感に溢れ、ダイナミックさを高揚させている。

敢えて言えば冒頭のパーティーシーンが延々とだらだら続くので根気を必要とすることぐらいでしょうか。でも、普通のビデオ撮影ってたいてい他人が見れば超退屈でしょう。こんなものなのかもしれないが、90分に仕上げるための時間調整だったようにも思われる。まあ、ここが立派だとハンディカメラによるドキュメンタリー風でもなくなるので難しいところでもあるが、、。

こういうパニック映画であれば、昔の「ポセイドンアドベンチャー」のように、有事の際には人間は如何に行動すべきか、なんていう命題のようなものを映画で勉強したものだが、無論この映画にはそういう教訓めいたものは一切ない。むしろ、恋人を探しに行こうと危険な方向に行こうとするのだから逆バージョンである。

映画は切迫した行動を通して見える映像・音響が主役となっている。まさに逃げる人間の目がそこにある。その目を通して写るカタストロフィのすさまじさ。生のまま1時間途切れることがない。固唾を呑んで体験する観客。やはり、どこにでもある映画ではない。計算されてはいるが、ハンディカメラ風の映像はまさしく生映像である。

そして、いよいよ被写体であった生き残った二人にも最後の時が来る。後世に託すためにも遺言めいた映像を収める。そう、この映画はファーストシーンのセントラルパークに転がっていた一機のビデオカメラに収束するのである。

まあ、いろんなパニック映画を見てきたけれど、最初から最後まで主観的なカメラ目線での90分というマイムービー劇映画は僕は初めてである。やはり趣向としては斬新なものを感じる。映画ファンとしては必見だろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)牛乳瓶 uyo[*] 水那岐[*]

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