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[コメント] 無言歌(2010/香港=仏=ベルギー)

こういう映画ってコメントがしづらい。文革前の毛沢東の失策を題材にしているのだが、それが人間として重過ぎてそれに比重がかかり過ぎる。映画としての出来はその事実に圧倒されどうでもよくなるぐらいなのだ。
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**ネタバレ注意**
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作品的には砂漠のど真ん中に穴倉を掘った土色と光のアクセントが素晴らしく、空気も柔らかく映像的に本当に秀逸である。が、それがために余計この悲劇が僕らの脳裏に怒涛のように襲ってくる。

話らしい話はそれほどなく、ネズミを食べたがために吐いた嘔吐物さえ食料として食べる人。飢え死にした人の衣類はもとより、人肉さえも食らう同胞たち、、。それはもうこの世の地獄であろう。戦争中でもないのにある革命家の思いつきで大量の人命が犠牲にされる政治体制。それでは人は何のために戦い抜き、生きて来たのか。

夫に面会に来た妻との出来事がこの映画では唯一劇的で、ドキュメンタリーから脱している。されど、土饅頭を求めてさすらい、何人もの墓を暴く妻の前を前にして観客はすでに言葉を失なわざるを得ない。

同胞が死にかけていると言うのに、対比的に収容所長が温かいうどんを食べているのと同様、北京では革命家から支配者になり果てた毛沢東が、女優上がりの妻に文化と言う政治を司ることを奨励する。人間とは支配者として君臨すると革命時に幻想を見た淡い人類愛には決して触れることがないのであろうか、、。

こういう同胞の犠牲があって初めて現代の中国も存在するのだろう。それは200万人も犠牲になった太平洋戦争を経験した我ら日本人とて全く一緒である。我々は過去に戻ることの重要性を今こそ求められているのではないだろうか。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ゑぎ[*] ジョニー・でぶ 味噌漬の味[*] 3819695[*]

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