とにかくガチンコと言えるような格闘シーンは一見の価値ありでしょう。ホントに早回しを使っていないのであれば、あれは人間業とは思えないほどのレベル。また延々と続く追いかけっこシーンで見せるトニーの軽業は（正直、身の軽さではジャッキーを上回っていた）ユン・ピョウの域に既に達している気が。

ただ一本の映画のレベルとして語れば、まだまだ開発途上ですね。タイの人々の信仰心の厚さは理解できましたが、あのお話じゃ正直燃えれません。香港映画ほどの悪ノリなコメディ部分とまではいかなくても、一息つくコミカルシーンも欲しかった。またもう少し音楽にも力を入れて欲しかった。トニー・ジャーにもスター性はあまり感じられません。まあそれを補って余りあるほどの体技がありますが。これからいい作品に巡り会えれば化ける可能性は大です。

ラストのNG集なんかを見るまでもなく、ジャッキーリスペクトは感じられました。そして（悔しいけど）前述のようにアクション部分では、トニーはジャッキーをある意味既に超えてます。奇しくも２人共スタントマン出身、トニーがジャッキーのようにあれほどバランス感覚に優れた映画人に成長出来るかどうかはかなり疑問ですが、アクション俳優に徹するのであれば、まだまだ伸びるでしょう。これからもコンスタントにバラエティに富んだアクション映画に出演してくれることを望みます。

最後に、中盤の闇格闘場で意味ありげに登場した白人ファイターの得意技がそこら辺にある物をとにかくぶん投げ、ぶつけるものだったことが爆笑もんでした。