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[コメント] 華氏911(2004/米)

ジムで「ブッシュダメじゃん」と言ったオッサンがFBIに昼寝を妨害される社会で、野球帽被ったデブのオッサンが全世界に向けて叫ぶ。「ブッシュを追い出せ」ソレを無視できる訳は無い。劇場に足を運ぶだけの価値のある作品 2004年8月24日劇場鑑賞
ねこすけ

で、なんで4点なのかつーと、悩んだ末の結論なのだけど、この映画、見ていてちょっと退屈だったのです。あくまで映画として見た感想が★3。しかしマイケル・ムーア本人は★5を与えたい。そういう意味で★4の採点にした。

ゆきゆきて神軍』なんて見た事のない俺には、この映画の公開される前までに得た知識によるマイケル・ムーアと言うオッサンのエネルギッシュな面に圧倒され、心底カッコイイと思った。(そして同時に「おいおい」と思った事もあるけど)

タランティーノは本作にパルムドールを与えた。「政治的な意図ではなく、単に映画として面白かったからだ」コレには少々疑問を感じた。「単に映画として面白い」俺はそうは思わない(決して詰まらないとは思わないが)。この評価の根底に、米国人だから、と言うのが混ざっているのではなかろうか?そう考えた時、他国の映画祭を「米国人向けドキュメンタリー」が制した、と言う事は一体何を意味しているのだろうか?

あ、もしかして世界独裁者ブッシュにプロテストする、と言う意味を込めたのかも。でも、映画ボンクラのタランティーノはあくまで個人の主観で判断を下したのではないかと思う。映画の評価に主観が混じるのは当然の事だから別にそれでも一向に構わないわけだけど、俺、コレが取るなら前作『ボウリング・フォー・コロンバイン』の方が取るべきだと思うんだけど、どーなんですかね?タラちゃん。

内容に関して特に言及する気はない。ここに描かれている事の殆どは事実なんだろうし(勿論ブッシュもゴダールの言う通りタダのバカではないかもしれないとも思う)、そいつを否定して「この映画はプロパガンダだ!」なんて叫ぶ気は毛頭ない。だってプロパガンダだもん。当たり前じゃん、偏ってるよ。ドキュメンタリーとしてフェアじゃない?戦争の真実や、大統領の「中身」をニュースで流さない国家で、個人が製作した偏ったプロパガンダドキュメンタリー垂れ流してフェアじゃない、と言うのか?

この映画はアメリカのボンクラ達に向けられた映画なんだぜ?ニュースを見て情報収集した所でアメリカ万歳報道しかしないメディアの下で生活してる人たちの目を覚ます為に製作されてるんだ。ここにあるのは俺達には目新しくなくても、彼らには(もしかしたら)目新しいんだ。

それ掴んでフェアじゃない、ってのはフェアじゃないような気がするのだが。

「批判批判ばかりしてもねぇ」と劇場に足を運ばないおっさんも居るみたいですけど、ソレは足を運んでから言ってくれ。立場が苦しくなるから見に行かないのではないのか?尻尾振ってる人の「中身」を認めたくないってか?

批判する人も言い分も分かるし、肯定する人の言い分も分かる。でも、「こんな時代に」作られたこの映画の価値は認めて欲しい。

しかし、実際、俺も映画としてはあまり面白いと思わないし、実を言うと中盤ぐらいまでは退屈だった。終盤の、息子を戦争で失った女性の嘆きや戦場の兵士の本音をぽろぽろつぎはぎして観客のヒューマニズムに訴えかけるシーンでは同伴していた俺の彼女も思わず泣いていたけど、この辺りは映画として中々面白く出来ていたと思う。

ただ、全体を通して見ると前作『ボウリング・フォー・コロンバイン』の映画的面白さには全く及ばない。ムーアも面白さよりも「ブッシュをホワイトハウスから追い出す」事を目標にしていたのだろうから仕方ないのかもしれない。

ただ、この映画を見て「他人事」と思っている自分が一番怖い。我が国日本だって、いずれこんな風に自衛隊(日本軍?)に入るしか飯が食えない、国家が情報を操作してフェアな報道がされない、政府は国民の感情を利用して金儲け、上院議員は金持ちドモの集まりになる、電話が自由に盗聴され、どこかで「政府は嘘をついている!実際は違うんだ!」と叫べば家まで政府直属の機関が尋ねてきて昼寝を妨害してくれる、そんな国家にならない保証は何処にもないんだ。でも、どうして俺は「他人事」と思って見ていられるのだろうか?

そんな自分が良く分からない。

しかし、果たしてブッシュを追い出して世界が変わるかどうかは分からない。勿論「やらなければ変わらない」のは当然だから、ムーアの運動は価値のある物だと思う。それで世界が変わらなくても、やらなければ変わらないのが現実なのだから。

当初は★3で良いと思ったのだけど、やっぱりそんなムーアの凄さに★3は失礼だと思った。

どうでもいいけど、画面が暗転して音声だけで911の悲劇を伝える描写は『セプテンバー11』のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが用いた手法ですね。あれはフラッシュバック的に映像も少しありましたが。

(評価:★4)

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