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[コメント] どついたるねん(1989/日)

観なおしてみると完成度がメッチャ低く、びっくりするほど荒削り。しかしまだ拳闘しか知らぬ赤井の肉体、大和田正春との不意のシャドウには、かけがえのない輝きがある。
ペンクロフ

初見時はボクシングよりも、赤井の実話よりも、生々しい「大阪の映画」であることに驚かされた。大阪人は会話における手数が多く、沈黙を嫌い、平気で相手の懐に飛びこんでズケズケと厚かましく言葉を高速でぶつけあう。言葉の毒は辛うじて笑いにコーティングされ、一方で等身大の本音を容易に吐き出しはしない。四国でのんびり育ってから東京に出たわたくしなんか、あんな連中の中ではとても生きていけそうにない。東北の人なんかも、いかにも大阪が苦手そうな気がする。世間話にも「なんやオチないんかい」とか言われたりしてね、恐ろしいところです。

通天閣で死の恐怖に襲われた赤井は、何も言うことができずに吐くだけだ。ああいう場面、いかにも大阪人だな! と思うのだ。快調におもろい会話を飛ばしまくる一方で、本当のこと、率直な気持ち、泣き言、自分の弱さは言語化しないしする気がない。そんなもん笑えんから、おもろないから。大阪には即物的で単純な「ええカッコしい」文化が生きているが、決して人間や人生そのものが単純なわけではない。『どついたるねん』には大阪独特の「感じ」がよく出ていると思う。ちょっと出すぎかもしれぬ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)DSCH けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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