[コメント] 酔っぱらった馬の時間(2000/仏=イラン)
青い空、白い雪。彼らはその空を見ない。言っておくけど、泣いてる暇なんてありゃしないよ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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「人生は苦労ばかり。子供ですら老いていく。」怖い歌だ。それを子供本人たちが歌う。歌で自分を慰めるんじゃない、歌で自分を追い立てていく生活。そうしなければ生きていけない。この切迫感。あっという間に時間が流れていく。子供でいることすら許されないその強引な時間の流れ方。凄まじいな。「かわいそう」という感想を持つことが彼らへの侮辱のように感じてしまう。
重い荷物を背負っている彼らに見えるのは大地のみ。空を見上げる余裕はない。アーマネが神様にお祈りをしていたら、アヨブ兄ちゃんに怒られた。彼らは大人にならなければならなくなった。子供のうちは大人に守られてそっと泣いている時間があるかもしれない。彼らはその時間を奪われてしまった。でも、アヨブは大人になりきれなくて、泣く。ロジーンは泣かない。大人になれないマディは赤ん坊のような声で泣く。きっと子供に近いほど泣く。泣くことだけが彼らに残された子供っぽい仕草なのだろう。本当は子供なんだもん、泣きたいよね。でも泣いている暇なんかないその過酷な生活の中で、アヨブ一家が、小さいマディに不治の病だとわかっていながら懸ける希望への意地。幼い彼らのつながりの強さはそのまま生き抜く意志にもつながっているのかもしれない。
そしてこの力強い流れを断ち切らずに、そしてあくまでもリアルに仕上げたラストにぐっとくる。彼らはいつか、あの空を見上げることがあるのだろうか。
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